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武士は食わねど高楊枝  作者: 一森 一輝
栄光の歴史持つ国にて
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2話 幼き獣(2)

 その日は、ホームルームがあった。


 いつもなら、無い。そもそも、一学年に五百人ほど生徒がいて、それがたった三つに分けられるものだから、一クラスが非常に多いという事態になる。そのために更にクラス内で四分割程度にされるということもあり、一クラス全員が集められるという事自体が珍しいことだった。


「えー、連絡事項を伝える」


 講堂で、壇上に登った教官が、単刀直入に切り出した。まっすぐな視線で、生徒全員を見渡していく。


「最近、第三エリアにケルベロスの幼生を見たという情報があった。勤勉な諸君らには当然周知の事だろうが、ケルベロスというのは第六エリアに生息するヘル・ハウンドの突然変異種だ。ケルベロスの眷属が地表に現れるようになったのが、ヘル・ハウンドだという説もある。

 つまりこのまま成長させてしまうと、第三エリアに第六エリアにもなかなか現れない、オーガレベルの亜人がうろつくという危機的事態になりかねないのだ。亜人は成長が早く、諸君らが第三学年になるころには成獣になる事だろう。悠長にも聞こえるが、奴らは一日ごとに強くなる。

 見つけたら、すぐにでも討伐せよ! 諸君らには、その実力があるはずだ。見事討伐を果たしたものには、報酬として1万ポイントを与えるように指示してある。放課後、受注しておくように。以上、解散!」


 ざわめきだす生徒たち。それぞれ、誰が一万ポイントを得るかと興奮している。だが、たった一人だけ顔色を悪くしているものがいた。ファーガスはちらとベンを見やり、しかし気づかない振りをして、「ほら、早くいこうぜ」と彼を催促する。


「う、うん……」


 元気がない。やはり、とファーガスは改めて確信する。しかし、どうするのか。ファーガスは、ベンの次の行動が分からない。


 それに、自分がどうすべきなのかも。


 放課後、ギルド近くの校舎の裏側で、ローラを待っていた。


 彼女が来るまで、無言でいた。ベンが、俯いて考え込んでいたからだ。心の内で「バレバレだぞ」と教えてやり、直接伝えられないもどかしさに空を仰ぐ。シルキースカイ。UKの気候と言うものは変わりやすく、もしかしたら雨が降るかもしれないと思った。


「すいません、お待たせしました」


 スコットランドクラス特有の白いローブを着こんで、ローラは現れた。ベンが反応薄く「じゃあ、ギルドに行こうか」と一人で先に行ってしまうのを見て、少女はファーガスに耳打ちしてくる。


「……やっぱり、ケルちゃんの件ですかね」


「ああ……。どうでもいいけど、ケルちゃんで通すの止めてくれ」


 言われたとおり、ギルドでケルベロスの幼生の討伐依頼を受注した。先ほどからずっと、ベンは上の空だ。ローラが「大丈夫ですか?」と尋ねると、少し驚いてから「う、うん」とぎこちなく頷く。


「……」


 ファーガスは、ただ切ない表情で彼を見つめるしかできない。亜人と言うものの脅威を、少年は恋焦がれる相手の次に知っている。そのベルに関しては、彼女が山に入れているという事だけでも心底感心するほどだ。亜人に対してPTSDを起こしていてもおかしくはないというのに。


「じゃあ、皆行こっか。あと十数ポイントで次のエリアに入れる。今日が正念場だね」


 彼はあくまでケルベロス討伐について触れなかった。ファーガスは、あのあどけない光首の獣を思い出す。

 幼生というだけあって、可愛らしいと思わないでもなかった。つぶらな瞳は、普通の子犬と変わらない。日本に行ったことのあるファーガスだから、それそのものに抵抗感はなかったのだ。しかし素直に近づけなかったのは、理性によるブレーキなのだろう。


 第三エリア。ここまで到達している第一学年は、ファーガスの知る限りでまず自分たち、次にベルのパーティ、驚くことにハワードも単独でここまでたどり着き、他にもクラス問わず数える程度だが居ると聞いている。


 その日の進む道は、蛇行していた。ベンが、先頭を務めたのである。後方を守る二人は、それを心配しながら見つめていた。亜人を数匹狩ったが、数匹逃がしたり今更木の根に躓いたりと不調気味だ。


 ファーガスは、その内に何となく既視感を抱き始めた。木々の中で、タブレットも見ていないのに、何処となく見覚えがある。


「……ファーガス、ここ……」


 ローラの言葉で、はっきりと思い出した。あと少し歩くと、以前ケルベロスが居た場所に着く。


 その時、ベンがはっとして顔を上げた。「何か、聞こえない?」と驚くほど静かな声で言う。ファーガスはそう言った彼の目を見て、息の詰まるような思いをした。――据わっている。だからこそ、少しだけ気づくのに遅れた。


「この近くで、戦闘があるみたいですね……」


 ローラの声に、ファーガスは索敵を行った。ここから百メートルもない場所で、七人の騎士候補生が一匹の亜人を包囲している。一パーティの最高人数が五人だから、最低でも二パーティ居る計算だ。複数のパーティ間の協力があると、報酬のポイントがガクッと下がる。それでも、1万ポイントは魅力だったのだろう。


「……行こう、みんな」


「あっ。待てよ、ベン!」


 音もなく動き出した彼は、木々の多い森の中で少しずつ正体をなくしていった。聖神法で加速を掛けたのに、結局見失ってしまう。


「くそっ! ……ローラ! ともかく、あっちの戦闘場所に向かおう! 多分そこに居るはずだ」


「はい!」


 二人はまっすぐに進み、針葉樹の森の中で剣戟を交わす人と獣たちを捉えた。ケルベロスの幼生は依然としてあどけなく、しかし懸命に騎士候補生から逃げ回っている。


「おや、君たち……」


 上級生らしき人が、ファーガスたちを見つけて近寄ってきた。息が切れていて、ちょっと休憩と言った具合だ。彼は、ファーガスたちの近くの木に寄り掛かりながら問うてくる。


「君たちも、ケルベロス討伐を?」


「あ……、ええ。はい」


「そうか。うーん……。まぁ、すでに二パーティだし大差ないか。それに、二クラス混合ってことは特待生だろうし、戦力にならないでもない。本当ならあまりアイルランドクラス以外の騎士候補生に甘い顔をしたくないんだが、こういう非常時は別だ。早いところケルベロスを追い立ててくれよ。下級生が傷つくのは避けたいから」


 出来るだろう? と言われ、曖昧に頷いた。だが、必死に逃げ惑うケルベロスを見て、討伐に混ざる気が失せてしまった。――ケルベロスは、人間と同じように赤い血をしているらしい。ファーガスは、足元の草に目を向けた。枯れて黄土色になった小さな花に、真っ赤な血が付いている。


「どうした? 早く手伝ってくれよ」


 不思議そうな顔をして、二人を見つめてくる。それが次第に疑うように目になって、「おい」と強硬な声がかかった。


 同時に、「ぎゃっ」と短い声が上がった。


「何だ!?」


 ケルベロスに今にも剣を突き立てようとしていた生徒が、首を強く掻いて悶え始めた。彼はぶるぶると震えながら伸びあがり、一度痙攣してぐったりと脱力する。一拍おいて、崩れ落ちた。枯葉の、つぶれる音。


「何だ……? ケルベロスの、能力なのか……?」


 ファーガスたちに話しかけた上級生がそのように推察するが、きっとそれは外れていた。ファーガスは半ば確信していて、ローラについても同様らしい。


「くそっ、早くケルベロスを殺――ぐっ、……ぁっ……!」


 一人ひとり、陰もない何者かに片づけられていく。しとしとと、雨が降り始めた。少しずつ勢いを増していく。一人ずつ気絶させられていく。


「……何、やってるんだよ。ベン……!」


 ファーガスは、震えていた。ベンの姿は、依然として見えない。彼の心も同じだ。音もなく、形もなく、暴走し、亜人のために騎士候補生に危害を加える。


 ケルベロスに迫る一人の騎士候補生が、足を押さえて倒れこんだ。そこから、血が出ている。ファーガスは、思わず大声を出していた。


「止めろッ、ベン! お前、自分が何をやっているのか分かってんのかよ!」


 少年の声に、全員が動きを止めた。例外は、ケルベロスだけだ。幼き獣は、必死に枯草の上を走っていく。そうして、遠く木々に紛れ、次第に見えなくなった。


「……ベンって、何だ? もしかして、ベンジャミン・コネリー・クラークのことを言ってるんじゃないだろうな」


 イングランドクラスの同級生が、疑わしげな視線を向けてくる。ファーガスは、自分の発言を思い出して頭が真っ白になった。


「何だ? どういう事だ? まさか僕たちは、仲間である騎士候補生にここまでやられたっていうのか……?」


 上級生の言葉に、ファーガスは取り繕う言葉を見つけられなかった。そして、肩に手を置かれる。ローラが何かうまい言い訳を考え着いたのかと、思わず期待してしまった。


「……ファーガス、もういいよ」


「え……?」


 それは、ベンだった。雨の中、彼は進み出る。


「すいませんでした。……言い訳はしないし、できません。ただ、……」


 ベンは、それ以上言わずに俯いていた。意識のある上級生が、まるで信じられないものを見る目でじろじろとベンを見定めた後、嫌悪を滲ませた表情で言う。


「このことは、ギルドの方に報告させてもらう。覚悟しておけ。ただの私闘で他の騎士候補生を気絶させたならともかく、……お前は亜人の手助けをしたんだ。そのことを忘れるなよ」


 彼は、逃げて行ったケルベロスの後を追おうともしないで、まっすぐに下山していった。タブレットで救助を頼んでもいたのだろう。鳥型の聖獣と思しき生物が、聖具を置いてここ一帯に結界を張る。


「……ごめんね。二人には、迷惑かけた」


「ベン……」


 ファーガスも、ローラも、かける言葉を見つけられなかった。その場は黙って帰途に着く。その時、ファーガスは頬に当たる雨の冷たさに驚いてしまう。


 空を仰ぐと、雨は雪に変わっていた。




「海外旅行に、よく行ったんだ」


 消灯の直後、ベンはそのように語った。


「ジャパン、チャイナ、アメリカ、ロシアなんかも行ったかな。観光地なんかじゃなくて、本物の『その国』を味わう旅。お父さんが色んなところに友達がいてさ、そこにしばらく泊めさせてもらうんだ」


「……旅行か。楽しいよな」


「うん。それでさ、小さいころは気にならなかったのに、十歳辺りから何故だろうって不思議に思うようになったんだ」


「亜人の事か?」


「そうだよ。そう、亜人の事……」


 しばし、ベンは黙っていた。ファーガスは、それ以上何も言わない。だが、言いたいことは理解できた。異文化に入り込むと、自分の知る世界とは全く違う事に気付いて愕然とすることがある。


 亜人。日本では、ただ国民そのものとして扱われていた。アメリカでは、一昔前の黒人や、良くてもワーキングプアのような存在。そしてイギリスでは、知性も理性も有さぬ獣。


 考えていると、再びベンが話し出す。


「ぼくさ、動物が好きなんだよ。特に、犬。すぐに懐いて来てくれて、可愛いんだ」


「……そうだな。犬は、動物の中でも特に懐きやすい」


「実家には居ないけど、旅行先ではよく可愛がらせてもらったよ。中には、亜人……っていうか、そこでは魔獣とか何とかって呼ばれてたけど、そういうのがペットの家もあった」


「……ああ」


「――何で、なんだろうね。何でこの国だけは、亜人をそこまで毛嫌いするんだろう」


「……この国っていうか、この国の貴族は、だろ。普通の人は、亜人の事なんて何にも思っちゃいないんだよ。だって、ほら、接触する機会すらないだろ?」


「そう……だよね。貴族が、おかしいんだよ。うん、そうだ。……ありがとう、ファーガス。ちょっと自信ついてきた」


「ああ、頑張れ。先輩は脅しをかけるようなこと言ってたけど、停学が関の山だ。何なら、スコットランドクラスの『ホーリー・ビースト』っていう聖神法で、仲間にしちまおうぜ」


「そんなこと出来るの?」


「ああ、出来るさ。そしたら1万ポイントが入るし頼もしい仲間も増える。一石二鳥、濡れ手に粟って奴だ」


「いいね、それ。じゃあ、そうしよう」


「頑張ろうぜ」


「うん!」


 寝る前の会話は、非常に盛り上がった。前途は、希望にあふれていると感じた。少しくらい苦難があったって、乗り越えていける。深夜のテンションと言うものは恐ろしいもので、根拠もなしにそう思えた。


 幸せな時間だった。


 翌朝、朝食を二人で取っていた。雑談で、「ちょっと何言われるのか怖いなぁ」とベンがぼやいているのを聞いて、「気にすんなよ」と笑い飛ばしてやる。


「そうかな」


「ああ、どうせ言っても停学どまりだ」


「ははは。昨日も言ってたね、それ。……でも改めて考えると停学も結構アレじゃない?」


「いや、そんだけのことはしたろ……」


「あっ、はい。ごめんなさい」


 妙な会話を交わしつつ、くつくつと互いに笑っていた。そこに、声が現れた。


「おっと、手が滑った」


 その男子生徒は、ベンの頭に向かって朝食をぶちまけた。「熱ッ!?」とベンは悲鳴を上げて立ち上がる。そこに、別の男子生徒の声がかかる。


「おっと、大丈夫かよ」


 言いながら、その生徒がベンの足を引っかけた。頭から顔の右半分がスクランブルエッグまみれのベンはほとんど盲目状態で、いいようにひっかけられ、スープに足を滑らせて受け身も取れずに転んでしまう。


「ちょっ、お前ら何してんだよ!」


「あ? グリンダーお前何言ってんだよ。不幸な事故だろうが」


「事故!? これが!? お前らあんまりふざけたこと言ってると」


「ふざけてんのはそこの『亜人庇い』じゃねぇかよ!」


 怒声に、ファーガスはたじろいだ。我に返って周囲を見渡すと、誰も彼もが自分たちに注目している。しかし、助け舟を出そうという人間はいなさそうだった。ベルの姿も、まだ見えない。


「な、何、これ……?」


「何、じゃないだろう。君の話をしているのだぞ」


 上級生が、ベンに冷たく指摘する。いまだ視界が晴れない彼は、その言葉にびくっ、肩を震わせた。


「おい、あんたそんな言いぐさ」


「グリンダー。……周り見ろよ」


 呆れた物言いに、ファーガスははらわたの煮えくり返るような思いを抱いた。言われなくとも、分かっている。周囲の目が冷たいものであるという事など、とうに承知だ。だが、納得できるものではない。

 ――何だ、これは。確かに馬鹿な事をしたが、たかだか十二、三、の少年の暴走に、上級生までもがこの対応なのは、あまりにも非情だ。


「……チッ。もういい。――大丈夫か? ベン」


「う、うん……」


 構わず、頭にかかった食べ物を取っ払って立ち上がらせてやる。そこに、罵倒だの野次だのが飛ぶが、ファーガスは無視した。


 ただ、一つを除いて。


「何だ、グリンダー! お前は『亜人庇い』庇いをしようっていうのかよ!」


「……オーガも見たことのない奴が、何言ってやがる」


 ファーガスは険しい目つきでその男子騎士候補生を睨み付けた。奴は、少年に対して訳の分からないという顔をする。にわかもいいところだ。分かったようなつもりで居て、実際は何も分かっていない。


「……おい、何だよその目つき。喧嘩を売ってるのか」


「……」


「いいぜ、やってやろうじゃんか。みんな! グリンダーとクラークをボコボコにしてろうぜ!」


 わらわらと、第一騎士候補生が集まってくる。上級生はファーガスに反感と冷酷の視線を向けながらも、今は静観を決め込んでいた。喧嘩。ここでやるからには、素手だろう。


 ベンに頼る気はなかった。彼は、隠密だからこそのあの実力だろうとファーガスは見ている。正面突破なら、ファーガスの守りをかいくぐれる奴なんかいない。自身で、そのように信じていた。


 まず、にらみ合う。一対多において、前者から切り出すのは下策だ。密集地帯に飛び込んで勝てる道理などない。孤立した一人一人をつぶす。最初の内に徹底できれば、戦意も削げる。


 一人が、来た。


 ファーガスは、相手のパンチをわざと顔近くで受けとめ、ひっこめる手を掴んで引き寄せた。ぐらつく敵に膝蹴りをお見舞いする。上手く決まれば、それでしばらく立てなくなる。


 追い打ちに出ようとした他の奴らは、その様を見て一気に戦意を失ったようだった。ファーガスの餌食になった男子生徒は、床に倒れて呻いている。キッツいんだよなぁ、と他人事のように見つめた。顔を上げて、問う。


「次、誰だ」


 強気の奴に強気で向かってくる輩は少ない。ただの無鉄砲か、非常な肝っ玉の持ち主でない限り、どこか萎縮する。ぶつかり合ったらどちらも怪我をすることが分かっているからだ。


 あくまで好戦的なファーガスの態度に、奴らは躊躇いを見せ、仲間内で「お、お前行けよ」などと言いあっている。ちら、とバレないように上級生たちの様子をうかがう。強い反感を覚えているものが多い。引き際とわきまえ、ベンに手を差し伸べた。小声で言う。


「さっさと逃げよう」


「で、でも……」


「ああ、そうだな。朝飯、食い損ねちまった」


 あえてベンの意図から外れた言葉を返した。そして、にかっ、と笑う。ベンもやっと相好を崩した。少年の手を掴み、立ち上がろうとする。


「何の騒ぎだ! これは!」


 その時、食堂中にびりびりと響くダミ声が現れた。ファーガスは驚き、ベンはすくみ上る。教官はまっすぐにこちらに歩み寄り、騒ぎの渦中全員を睥睨する。


「……何があった? 簡潔に述べろ」


「グリンダーが蹴って来たんです!」


「本当か?」


「はい。殴りかかられたので」


「……」


 教官は、周囲を見回した。関与していない生徒は我関せずを目一杯に示すべく、朝食に没頭している。


「私闘が禁じられているのは知っているな、グリンダー」


「はい」


「お前もだ。本当に痛がっているわけじゃないだろう。立て」


「……はい」


「細かいことは聞かん。この年頃の私闘など、よくあることだ。故に、諸君らには一週間の謹慎を申し付ける。今すぐ自室に戻って、この意味をよく反省しなさい」


「はい」


「は、……」


 ファーガスは、その時違和感を覚えた。公平で、正しいことを言っているように聞こえる教官の言葉。しかし、何かがおかしくはないか。


「……どうした? グリンダー」


「あ、いえ……。……はい」


 けれど、ファーガスは違和感の正体に気付けなかった。そのことを後悔するのは、謹慎が解ける一週間後になってからだ。

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[気になる点] 「海外旅行に、よく言ったんだ」 言った?
[一言] 白人式コミュニケーション術(対白人を除く) 第一段階 「貴方は人間ではない。○ね。」 第二段階 「貴方は人間ではないけど、道具としては使えるな。奉仕しろ。」 第三段階「貴方は一応人間だけど、…
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