寵児
手に入らない物はない、いつだってそうだった。
幼稚園の頃、チサトちゃんの持っていた母親の形見の真珠のネックレスだって、パパに言ったらその日のうちに私の物になったし、高校生の頃はマサミちゃんのカワイイピンクのイヤリングも「私が頂戴」って言ったら、直後に快くプレゼントしてくれた。
家であろうが車であろうが、島であろうが星であろうが、手に入れるだけの富と名声を備えていた。
最近手に入れたキョウコちゃんの彼氏のマキトくんは、頑なに私を拒む。
キョウコちゃんに「頂戴」って言ったら少し嫌がったけど、パパの知り合いのバケモノみたいな容姿の男に三日三晩凌辱され続けたら了解してくれたんだけど、気が狂っちゃったみたいでなんか哀れだから眠らせてあげたの、永遠に。
そんなこんなでマキトくんは私の物になったはずなんだけど、私の何が気に入らないのかわからないわ。もちろん、キョウコちゃんの事は残念だと思うけど、あれはキョウコちゃんが悪いから自業自得なのよ。
この前大学で会った時、マキトくんは物凄く怨めしい目で私を睨み付けて、『お前は悪魔だ!死んで償え!』って言って包丁の切っ先を私に向けて襲って来たんだけど、私には常にボディガードがいるから助かったの。失敗したマキトくんはそのまま逃げて行った。(と言うより私が逃がしたんだけど)
残念な気持ちで一杯だったし、何より裏切られた気持ちで埋め尽くされた。何があってもマキトくんは私の物にはならないみたいね。先立ったキョウコちゃんの気持ちを思うと、何故マキトくんはそんな惨い事を平気で出来るの!?って思ったわ。
私は手に入らない物なんて無いよ!!
マキトくんの逃げた先はだいたいわかる。パパに言って鉄砲を貸してもらった。私はこれから理不尽なマキトくんを殺しに行くの。キョウコちゃんの無念はきっと晴らすわ!!
キョウコちゃんのお墓の前で泣きながらうずくまっているマキトくんの後頭部を目掛けて、私は手に持っている鉄砲の弾倉が空になるまで撃ち続けた。懺悔する暇も与えない、死ぬことこそ懺悔なのだから。
マキトくんの亡骸を仰向けにしてみたけど、誰だかわからないほどグチャグチャになっていた。
これで一件落着よ。
さて、次はサヨコちゃんの彼氏のヒビトくんを貰いに行こっと。
私に手に入らない物は無いのだから。
2007年5月




