第二十章:王国の腐敗
今回から事態が急変します!
王国の腐敗、帝国の危機を堪能してください。
翌朝ベアトリスは早く起きて、
屋敷の自室で帝国のサイード皇帝に、
魔力通信で連絡をしていた。
「ベアトリス」
「状況を報告せよ」
サイード皇帝は、
腕組みしながら、
報告を聞き始める。
「はい、サイード皇帝」
「王国は現在大規模な軍事作戦を、」
「検討している最中です」
「近いうちに侵攻する可能性は、」
「高いと思われます」
「そうか……」
「こちらは和平を求めてるのにな……」
「難しいものだ」
「我が軍も……」
「準備しておく」
「私は和平交渉で今日王国へ行く」
「一人で十分だ」
「かしこまりました」
「勇者たちはどうなっている?」
「無力化されました」
「また何かあり次第……」
「随時報告せよ」
「サイード皇帝閣下、」
「かしこまりました」
魔力通信を終えたベアトリス。
振り返るとシアンが立っていた。
「ばあさん」
「コソコソ話は終わりましたか?」
「ええ……」
「落ち着いて聞いてください」
「何かしら?」
「以前禁忌の道具に、」
「何が書かれていたか……」
「秘密にしていましたが……」
「明かしましょう」
「お願いするわ」
「恐らく今日または近日中に……」
「帝国の上空に巨大な魔力爆弾が、」
「投下されます」
シアンは冷静に淡々と事実を告げた。
「は?」
「そんな気配は一切無かったわ」
ベアトリスは苛立ちながら返答する。
「極秘の計画ですからね」
「私も疑っていました」
「どうにも今朝……」
「大規模な魔力エネルギーを、」
「感知したのです」
「恐らくカトル様は……」
「長年に渡る調査で……」
「王国の計画を知って……」
シアンは目をそらしながら、
自らの推測を話す。
「まさか!?」
「兄さんは……」
「そのせいで!」
ベアトリスも全てのピースがつながり、
怒り狂っている。
「今頃……」
「皇帝陛下は和平交渉で、」
「王国に遠征してますよね?」
「あの人は高速飛行できますし……」
「よく知ってるのね」
「古い知り合いですから……」
アリシアの父カトルとサイード皇帝は、
帝国学園時代の親友であった。
シアンは何度も屋根を破壊しながら、
屋敷に遊びに来る皇帝を、
出迎えていたのだ。
「早くエマ女王陛下に知らせないと……」
「民の避難も終わらないわ……」
「恐らく今からでは、」
「間に合わないでしょう」
「それでも伝えるわ……」
「何か手伝えることはありますか?」
さすがのシアンも協力を申し出るが……
「いえ、大丈夫よ」
「ここからは私の戦いだから……」
ベアトリスは再び魔力通信を行う。
「エマ女王陛下!」
「ベアトリス!」
「ご苦労様です」
エマ女王は労うように挨拶する。
「そんなことよりも!」
「今すぐ民を国外に……」
「それか異空間シェルターに、」
「避難させてください!」
ベアトリスいつもの礼儀正しさを、
かなぐり捨てるほど動揺していた。
「何があったの?」
「帝国の首都どころか……」
「国土全てを焦土にする魔力爆弾が……」
「恐らく本日投下されます!」
「なんてこと……」
「直ちに避難を開始するわ」
「一時間以内に……」
「全員をシェルターに、」
「避難させるのは難しいわ……」
「私もできる限りサポートします」
「お願いね」
「サイードには私から連絡します」
「はい」
「どうかご無事で……」
魔力通信を終えて部屋を飛び出す。
「どうしようかしら……」
「シアンは協力してくれるの……」
「アリシアに言ってみるしかないわね……」
「アリシア!」
食堂のドアを壊す勢いで開け放つ。
「ベア!どうしたの?」
アスタロテと朝食を、
食べていたアリシアだったが……
ベアトリスのただならぬ雰囲気に、
何かあったと感じた。
「大変よ!」
「帝国の首都に魔力爆弾が!」
「二人の力が必要よ!」
「私は入り口で準備してるわ!」
ベアトリスは要件だけを、
手短に話し終えて去って行く。
「えー!?」
「どうにか止めないと!」
「アスタロテ!」
「帝国まで飛べる?」
アスタロテはアリシアに、
まだべったりくっついていた。
「構わんぞ!」
「帝国は自然豊かで好きだ」
「黙って滅びるのを、」
「見てるわけにはいかぬ」
「アリシア様お待ちください」
シアンが立ち塞がる。
「シアン!」
「あなたも来てくれる?」
アリシアはいつものように、
シアンは来てくれると考えていたが……
「いいえ」
「関わらない方が、」
「アリシア様のためですよ」
「放っておいたらどうですか?」
「彼らが何かしてくれましたか?」
シアンにとっては、
アリシアの心配が最優先事項だ。
「何言ってるの?」
「罪もない人たちが、」
「死にそうになってるのよ!」
「理解してください」
「カトル様のためにも……」
「これ以上厄介ごとに首を……」
「突っ込むのはやめてください」
シアンはついに本音をぶちまける。
「見損なったわ!」
「シアンの馬鹿!」
「あなたやっぱり人間のフリを、」
「してるだけなんでしょ!」
「そんなの機械仕掛けの人形じゃない!」
「もう顔も見たくないわ!」
アリシアも頭にきて、
辛く当たってしまう。
「行こうアスタロテ……」
シアンは図星過ぎて立ち尽くしていた……
上手く言葉が出てこない。
アリシアはシアンを無視して、
アスタロテの手をつなぎ、
食堂から出て歩き出す。
「う、うむ……」
「大丈夫か?」
アスタロテは心配するが……
「知らないわよ」
「あんな頑固執事なんか……」
悪口をいった罪悪感から、
涙を流し始める。
「帰ってきたら、」
「一緒に謝ろうぞ」
「もう泣くな」
「うん……」
「アリシア巻き込んでごめんなさい」
「でも頼らざるを得なくて……」
屋敷の入り口付近で、
準備していたベアトリスと合流する。
ベアトリスは姪っ子の状態をみて、
一瞬置いていこうかと考えるが……
「いいのよ」
「シアンは?」
「来ないわ」
「はぁ……」
「情報開示遅すぎよ」
「でも確証はないかもしれないし……」
「シアンですらギリギリまで、」
「分からなかったのよ」
「王国ならやりかねないわ」
「安心せい」
「最悪、余が食らってやるぞ」
「頼もしいわね」
「一時間もあれば」
「首都まで飛んでいけるぞ」
「助かるわ」
「さあ行くぞ!」
アスタロテはドラゴン形態に戻って、
二人を乗せたまま飛び去っていく。
「シアンさん」
「大丈夫ですか?」
クララは騒動を聞きつけて、
駆けつけるが……
「いいえ」
「アリシア様を止められませんでした」
「ルリコ様」
「私が人でなしだって、」
「わかったでしょう?」
「アリシア様以外には、」
「ほとんど興味ないんですよ」
「だからあなたも私以外の人を、」
「好きになってください」
無自覚なのか、
さらっと本名で呼んでいるが……
「今からでも間に合いますよ」
「一緒に助けに行きませんか?」
「行動が人を変えるんですよね?」
クララは粘り強く説き伏せる。
「おじいさまに、」
「声をかけてきます」
シアンは工房にクララと移動し、
ガランドに会う。
「ガランド様」
「きたか」
「しけた顔しおって」
「ほれ」
「この聖剣をあの子に渡してくれ」
「老いぼれは行っても役に立たぬ」
短剣状態になった聖剣を渡す。
「ミカなら絶対に、」
「助けに行ったはずじゃぞ……」
ミカの話が出たら、
シアンは絶対に拒否できない。
「卑怯な人ですね」
「それを言われたら……」
「行くしかありません」
「卵を頼みます」
「任せておけ」
シアンとクララは手をつなぎ、
転移魔法を使ってワープしていった。
ガランドは卵が置いてあるベビーベッドの側まで行き、
見守り続けた。
お読み頂き、ありがとうございます。
次回はとんでもない展開になります!
果たしてアリシアとアスタロテはどうなってしまうのか……
応援よろしくお願いします!




