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第1話 空にきらめけ!ドリームスピカ誕生!(後編)

「わっ、何なに!?」

それと同時に、私を縛っていた蔦が萎びて解ける。

「なっ……」

「これは、もしかして……!」

驚愕するチェイスと目を輝かせるキララ。

その反応を見るに、2人にはこの光に何か心当たりがあるみたいだ。けれど、当然私にそんなものはある訳もなく、何が起こっているのか分からずに戸惑うことしか出来ない。


光は私の目の前へと集まり、やがて小さな星の形へと変わっていく。

それはパンと弾けたかと思うと、中から桃色の輝きを帯びる、小さな星型の宝石が姿を現した。

「な、何これ……?」

恐る恐る、宝石を手に取ってみる。

細かい彫刻が施された、ピンクゴールドの土台に納められたそれは、私が触れるのと同時にぽわんとした輝きを放つ。

キラキラしていてとても綺麗だけれど、一体これは何なのだろう。

「ねぇキララ、これって何なの?」

私の横で浮かぶキララに問いかけてみると、彼女は私の肩へと乗り、嬉しそうに声を弾ませた。

「それはドリームクリスタルっていって、ドリミーナに選ばれた時に現れる証みたいなものだよ」

なるほど、これがドリミーナに選ばれた証……って、え?

「ちょっと待って!それってつまり……」

「あかりと私がドリミーナってことになるね」

「嘘でしょ!?」

わ、私が、悪夢と戦う戦士……。

探していた人物がまさか自分だったなんて……というか、条件がどうとかいう話はどこへ行ったのやら。

いや、それとも、私が知らず知らずのうちにその条件というのを満たしていたのかな?

って、そんなことを気にしている場合じゃないか。

「とにかく、これを使えばアクムーダとかいう怪物とも戦えるってことだよね?」

「うん。そうだよ」

私の問いにキララが頷く。

それなら、やる事は1つしかない。

「分かった、やってみるよ!」

そう答えると、キララは目を輝かせた。

「本当?」

「勿論!私に任せて!」

「よし、じゃあ行こう!」

私の返事を聞いた彼女はそう言って、その場でくるりと一回転する。

すると、ポン、という軽快な音と共にキララの姿が煙に包まれ、その煙の中から桃色と白の携帯のようなものが現れた。

それは上の部分にキララの顔が付いており、その真下、普通のスマホならちょうどホームボタンがある位置に、何かを嵌める窪みのようなものがある。

何だろう、これ……。

呆然としていると、携帯に付いたキララの耳がぴょこんと動く。

「わっ!?」

「ふふっ、びっくりした?」

「ま、まさか、キララなの……?」

「そうだよ!」

す、すごい。妖精ってそんなことも出来るんだ……。

「さあ、私を持って、窪みの部分にクリスタルを嵌めてみて!」

その言葉に頷いて姿を変えたキララを手に取り、言われた通りにクリスタルを嵌めてみる。

「……こ、これでいいの?」

すると、携帯の液晶部分から桃色の光が溢れ出した。

「わあっ!?」

「最後に『ドリーミング・ハートコネクト』って叫んで!そしたらドリミーナに変身出来るはずだよ!」

「わ、分かった!……よし」

一呼吸置いて気合いを入れ、キララに教えてもらった言葉を叫ぶ。

「ドリーミング・ハートコネクト!」

すると、溢れた光が私の全身を包み、姿が徐々に変わっていく。

髪は腰の位置まで伸び、服装はスカート部分に羽の模様が描かれたワンピースと、ノースリーブの桃色のジャケットに変わる。

そして両手には白い手袋、頭には星と羽の飾りが付いたカチューシャ、胸の辺りには星の飾りが付いた大きな赤いリボンが現れた。


「空にきらめく愛の星!ドリームスピカ!」

光が収まると、私は自然とウィンクをしてポーズを決めていた。そしてそこから数秒の間の後、冷静になって自分の姿を確認する。

「……えっ、何これ!?」

何が起こったのだろう。叫んでから、ポーズを決めるまでの間はほぼ無意識に身体が動いていた。

「何か、勝手に色々言ってたし……というか、ドリミーナってこういう系のやつだったの?」

悪夢と戦う戦士という話だったから、てっきりもっと厳かなものなのかと思っていたのだけれど……私のその予想に反して、格好もポーズも随分と可愛らしい雰囲気だ。

これだと、戦士と言うよりかは魔法少女と表現した方が近いような気がする。

……けれど、まあ、これはこれでアリかも。可愛いし。


「くっ……アクムーダ、あいつをやっつけて!」

チェイスが腕を振りかざすと、私達を追いかけてきていたアクムーダ達が四方八方の物陰から飛び出してきた。

けれど、その数は先程までの比ではなく、10、20……30体くらいはゆうに超えている。

「えっ!?やばっ……!」

奴らは一斉にこちらに向かって飛び掛かってくる。

「わわっ、ちょっと待って!」

変身した自分の姿に気を取られていたせいか、反応が一瞬遅れてしまう。

咄嗟に避けようと飛び下がるも間に合う筈がなく、このまま鋭い爪が私の身体を直撃……すると思ったのだけれど、その予想に反し、私の身体は奴らの攻撃をひらりと躱す。

そして両足が地面に付いた途端、足元に力が集まってくるのを感じ、次の瞬間、私の身体は空高く飛び上がっていた。

「えっ!?と、飛んでる……!?」

具体的にどのくらいの高さなのかははっきりとしないけれど、電柱も、少し遠くに見える6、7階立てくらいの建物も飛び越しているあたり、相当な高さであることは間違いない。

見慣れているはずの街の風景も、こんなに高い所から見渡すのは初めてなので何だか少し新鮮に映る。

そう思ったのも束の間、風が私の真下から吹いてきた。

……いや、違う。私の身体が落ち始めたんだ。

あれ?というかこれ、どうやって着地すればいいの?

まさか、このまま地面に勢い良く落ちて……。

最悪な想像が頭をよぎる。

「待って待って!流石にそれはまずいって!」

「落ち着いて、あかり。普通に着地すればいいだけだよ」

戸惑っていると、腰に付いた白いポーチから携帯の姿になったキララが顔を出した。

「ふ、普通にって言ったって……この状態からの普通の着地なんて、どうすればいいのか分からないよ!」

というか、キララはどうしてそんなに冷静なの!?

「大丈夫、私を信じて!」

い、いやいや。流石にこの高さから地面に落ちたら絶対にただじゃ済まないでしょ……!

そうこうしている間にも、無情にも地面は近付いてくる。

「ああもう、こうなったらどうにでもなれ!」

やけになってそう叫び、半分諦めて目を瞑る。

「わっ、とと……」

けれど、衝撃は襲って来なかった。

着地の際に多少ふらつきこそしたものの痛みは無いし、足だって問題無く動かせる。

……す、すごい。あんなに高い所から落ちて来ても怪我1つしていないだなんて。

全身に力がみなぎるのを感じる。自分の身体とは思えない程の身体能力も、恐らくはこの力によるものなのだろう。

「ねっ、大丈夫だったでしょ?」

「うん。なんか、これなら行ける気がする……!」

「何してるのアクムーダ、早くどうにかしてよ!」

チェイスが声を荒げると、それを合図に怪物達が一斉に飛び掛かってくる。

先程まではただ逃げることしか出来なかったけれど、この力がある今なら……。


ギリギリまでアクムーダ達を引き寄せ、ひらりと上空へ跳び上がる。

よし、今度は丁度いい高さで跳べた。

そして奴らの背後へと回ると、その内の1体を蹴り上げる。

するとそいつは、勢い良く吹き飛んで後ろの怪物達にぶつかり、ぶつかられた怪物達はまるでボーリングのピンのように蹴散らされた。

「やった!」

喜んだのも束の間、巻き込まれなかったアクムーダ達の何体かがこちらに向かってくる。

「はあっ!」

向かってきた奴らの攻撃を軽くいなして、拳を叩き込んで吹き飛ばすと、潰れたような声を上げてその場に倒れ伏す。

一息ついてふと周囲を見れば、そこかしこに倒れた怪物達が。

どうやらいつの間にか、あれだけいた怪物達を全員倒していたらしい。

むむ……自分でやったこととはいえ、足元に広がる惨状は中々に恐ろしい。


「今だよあかり、怪物を浄化して!」

腰に付いたポーチからキララがまた顔を出す。

「オッケー!……って、浄化?何それ?」

反射的に了承してしまったけれど、浄化とは一体何なのだろう。

「光の力を一点に集めて、それをアクムーダ達にぶつけるの!」

「え、ええと……どうすればいいの?」

「まず、私の画面に星のマークを描いてみて!」

そう言うと、キララはポーチからひとりでに飛び出した。

どうやら、携帯のような姿の時でも彼女は自由に動けるらしい。一体どういう仕組みなんだろう……。

少し気になるけれど、それは一旦置いておくとして。

テキパキと指示を出す彼女の言葉に従って人差し指で星のマークを描く。すると、先程よりも強い光が画面から溢れ出し、辺り一帯を明るく照らす。

うっ、ちょっと眩しい……。

「そのまま両手を前に突き出して、チョキの形にしてみて」

「こう?」

キララの言う通りに腕を突き出し、指をチョキの形にすると、人差し指と中指の間に桃色の光が集まってくる。

「えっ、何なに!?」

「その手をアクムーダ達の方に向けて、『ピンキースターシュート』って叫んで!」

「う、うん。分かった!」


「きらめけ!ピンキースターシュート!」

そう叫ぶと、光は大きな2つの星に姿を変えて怪物達に降り注ぐ。

それと同時に、星屑を散りばめたような輝きが辺りに飛び散った。

すると、先程まであれだけいきり立っていた怪物達の表情が穏やかな笑みへと変わっていく。

そして彼らの身体が光に包まれたと思うと、次の瞬間には、怪物達の姿はもうどこにも見当たらなくなっていた。

「終わった……のかな?」

「うん。無事にアクムーダを浄化出来たみたい」

「よ、良かったぁ……」

「……あーあ、残念」

安堵していると、不意に頭上から声が降ってくる。顔を上げると、いつの間に移動していたのか、2階建ての家の屋根に座ってこちらを見下ろすチェイスと目が合った。

彼は相変わらずニヤニヤと笑っているけれど、その声は先程よりも低く口元も引きつっており、内心の苛立ちが隠しきれていない。

「さて、僕はもう帰らなきゃね。キングアクムーダ様に報告しないと」

そう言うと、彼はゆっくりと立ち上がる。

「あっ、待って!」

「またね」

引き留めようと声を掛けた私を無視して、彼はそれだけ言い残し、一瞬で消えてしまった。


「やったね、あかり!」

暫くその場で立ち尽くしていると、キララが私の腕に飛び込んでくる。それを受け止めて撫でてあげると、彼女は嬉しそうに微笑んで、私の手に頬擦りをした。

「これで、街の人達も悪夢から解放されたはず。あかりのお陰で、皆に平和が訪れたんだよ」

何が何だかまだよく分かっていないけれど、とりあえず勝つことが出来たみたいで良かった。良かったんだけど……。

「でも、これで終わりじゃないよね?」

だって、チェイスは去り際に『またね』と言っていた。

それはつまり、また私達の前に現れて悪さをするつもりだということだ。

キララも私と同じ考えだったようで、すぐさま真剣な表情へと戻る。

「そうだね。キングアクムーダの手先は、近い内にまたやって来るはずだよ」

「うぅっ、やっぱりそうだよね……」

思わずがくりと肩を落とす。

今日は何とか勝つことが出来たけれど、次も同じように行くとは限らない。

この先、本当に私1人で大丈夫なのかな……?

「あっ、そのことなんだけど……実は、ドリミーナはあかり1人じゃないんだ」

えっ、そうなの?

「うん。ドリームワールドからやって来た妖精は、私の他にもあと4人いるの。アクムーダに追われてる時に逸れちゃったんだけど、きっと皆、この街のどこかにいるはずだよ」

ということは、ドリミーナもあと4人いるってこと?

「そういうこと。まずは他の4人と合流して仲間を集めよう」

なるほど。てっきりずっと1人で戦い続けなくてはいけないのかと思っていたけれど、そういうことなら少し安心だ。

仲間を探すのは大変かもしれないけれど、一度やると決めた以上は頑張ってみよう。

「オッケー、私に任せて!」

「……ふふっ、ありがとう。あかりが私のパートナーでよかった」

キララはそう言って嬉しそうに笑う。その様子を見ていたら、こちらも自然と笑顔になっていた。

「これからよろしくね、あかり」

「キララ……。うん、こちらこそよろしく!」

この先に何が待ち受けているのか、今はまだ想像すらも出来ない。

……けれど、彼女と一緒ならどんな困難にも立ち向かっていける。

理由は分からないけれど、不思議とそんな予感がしたのだった。



to be continued……

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