【New】LastDrop ✦ Drop.021『 XYZ 』【4】
「次、何にしますか?」
そう問われた花厳のグラスは、ちょうど、次の一口で空になるところであった。
その、ほどよい声掛けに称賛の意を込め、
「ありがとう」
と、言った花厳は、オーダーを考える。
「う~ん。そうだな。――シーズンカクテルも今頂いたし……」
そうして考える中、花厳は、ふと思い立つと、
「あ。じゃあ、――桔流君の今日のオススメをお願いしようかな」
と、笑んだ。
その花厳のオーダーに、桔流は嬉しそうにすると、
「かしこまりました」
と、それを承るなり、またひとつ続けた。
「あ。花厳さん」
「ん? なんだい?」
そんな桔流の手元を楽しみつつ、花厳は応じる。
桔流は、シェーカーに氷を入れ、少量の水で氷を馴らしながら言う。
「もし良ければ、なんですけど。――来年の初詣、一緒に行きませんか?」
桔流は、問いながら、手元のシェーカーに、ホワイトラム、ホワイトキュラソー、レモンジュースを、手際よく注ぎ入れてゆく。
その桔流に、花厳は嬉しそうに言った。
「もちろん。いいよ。――君と初詣に行けるなんて夢みたいだな」
そんな花厳に嬉しそうに笑むと、桔流は、
「俺もです」
と言い、軽快な音を響かせシェーカーを振るった。
「あ。それで、――場所は、さっき言った〈白幸稲荷〉に行きたいなって思ってるんですけど、――どうですか?」
その桔流の提案に、花厳は、
「うん。構わないよ」
と言って微笑んだ。
そして、しばし記憶を辿ると、続けた。
「その〈白雪稲荷〉って、確か、健康とか学問、商売繁盛とか、あとは、縁結びとかでも有名なんだっけ」
桔流は、それに、
「そうです、そうです」
と頷くと、続けて紡いだ。
「あと、恋愛だけじゃなく、夫婦仲とか、子宝のお願い事にもいいみたいですよ」
その桔流の補足に、花厳は感心した様子で言う。
「そうなんだ……。――万能な神様だなぁ」
「ふふ。そうですね」
そんな〈白幸稲荷〉は、花厳の言葉通り、多種多様なご利益を得られるという“万能さ”も人気の理由で、中でも、出会いを望む者、カップル、夫婦などの参拝者が多く見られる神社でもあった。
そして、花厳と桔流は、その万能稲荷へと初詣に参じるわけだが――、その事を踏まえ、花厳はひとつ考える。
「う~ん。――でも、それだけ万能だと願い事に迷っちゃうね。――俺は、何をお祈りしようかな」
そんな花厳の言葉を楽しげに聞きながら、
「ふふ」
と笑うと、桔流は、仕上がったカクテルをグラスに注ぐ。
次いで、注ぎきったところで、桔流は言った。
「来年の元旦に、花厳さんがお祈りする事なんて、ひとつしかないんじゃないですか?」
「え?」
そんな桔流の瞳を見つめ返し、言葉の意を問う花厳に、桔流は微笑む。
そして、仕上がったカクテルを花厳の前に丁寧に据えると、胸を張るようにして姿勢を正し、その長くしなやかな尾をひとつ揺らした桔流は、
「来年の元旦に、花厳さんが神様にお祈りするのは、コレです」
と言うと、花厳が祈るべき願いを、告げた。
「――夫婦円満」
そうして据えられたカクテルの名は、――“XYZ”。
その名が有する由来は、様々な“終わり”、“最後”――。
授けられた意味は、“これ以上にない”、“究極の”――。
そんな彼には、さらに、“授けられた言葉”があった。
授けられた言葉は、――“永遠にあなたのもの”。
愛する者と過ごす、初めての聖夜。
その祝夜。
その手で仕上げたカクテルと共に、桔流が捧ぐは、花厳への――。
Fin.
旦 Thank you for your time... 旦
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