【New】LastDrop ✦ Drop.021『 XYZ 』【3】
(――あ。――あの子は……)
その花厳と桔流の視線の先では、先ほど来店した客たちが、小柄なネコ族のバーテンダー――茅花姫により、テーブル席へと案内されてゆく。
そんな二人客のうち、片方の青年に、花厳は見覚えがあった。
(あの子は確か、桔流君の友達の――)
その――、カラカル族の青年は、以前、花厳が桔流の恋人だと勘違いをした、桔流の友人――凪御影であった。
そんな御影に、勝手に勘違いをした事を心で詫びつつ、花厳が二人から視線を戻すと、桔流はまたひとつ静かにこぼした。
「樹神さんの洋服……やっぱ違和感すげぇ……」
「え?」
桔流からは、次に御影の名が出ると思っていた花厳は、静かに問う。
「“樹神さん”? ――それって、あのキツネ族のお客さん?」
それに頷くと、桔流はこそりと言う。
「はい。――樹神さん。稲荷神社の神主さんなんですけど、――いつもは和服なので……」
その桔流の話に、花厳は、今一度ちらりと彼らのテーブルを見やる。
そして、“樹神”と云うらしい、すらりとした男を見れば、純白の髪と毛並に、やや小ぶりな三角耳、加えて、ふわりとした大きな尾を持つ事から、彼がホッキョクギツネ族であろう事が分かった。
また、温和そうな性格であろう事も、その穏やかな表情から見て取れた。
無論、花厳は、“神社に居る時の樹神”を見た事がないゆえ、今の装いにギャップなどは感じなかったが、その端正な顔立ちや落ち着いた振る舞いからは、大人の男らしい魅力をも感じた。
「随分若く見えるけど、稲荷神社の神主さんなんだね」
花厳が今一度の確認を終え、ひとつ言うと、桔流は頷き、続けた。
「そうです。――〈白幸稲荷神社〉って云う稲荷神社の神主さんなんです。――因みに、その神社、色んなご利益のある神社って事で、結構有名なんですけど、――聞いた事ないですか?」
それに、思い当たる節があったらしい花厳は、言う。
「あぁ。その神社なら、名前と話だけは聞いた事があるな。――そっか。有名な神社なのは知ってたけど、神主さんがあんなに若い方とは知らなかった……。――なんだか、それだけでも人気が出そうだね」
すると、そんな花厳の推察に、桔流は楽しげに言う。
「ふふ。鋭いですね。――実は、まさにその通りで、――〈白幸稲荷〉には、神主目当ての参拝者も、結構多いみたいですよ?」
「ははは。まぁ、あんな素敵な神主さんが居たら、そうなるよね」
それに、花厳が笑って言うと、桔流もくつくつと笑った。
その中、花厳は先ほど見た、樹神の“目”をふと思い出す。
(――確かに、意外と分かりやすいんだな。――“そういう目”は)
花厳は、一目こそしたものの、樹神を凝視するような事はしていない。
だが、それでも、あの二人――樹神と御影が、“そういう仲”である事は、なんとなく分かった。
御影を見つめる樹神の“目”は、確かに、赤の他人である花厳にすら、“その関係性”を感じさせるものであったのだ。
そんな二人の事から、花厳が改めて思っていると、ふと桔流が言った。




