【New】LastDrop ✦ Drop.021『 XYZ 』【2】
「う~ん。――と、云うよりは、多分……」
「……?」
その桔流に、花厳が黙したまま眉を上げて問うと、桔流は続けた。
「――俺を見てる時の花厳さん。――“獲物を見るような目”をしてたんじゃないですかね」
「“獲物を見るような目”……? ――……そうなのか」
「多分、ですけどね」
そんな桔流の言葉に、自覚が無いらしい花厳は、しばし考え込むようにする。
その様子を見やりながら、桔流は言う。
「経験者には、分かっちゃうのかも」
「え? ――“経験者”って……?」
花厳が、その桔流に問うように顔を上げると、桔流は、花厳の視線を誘うようにして、店の入り口側にそっと視線を向けた。
花厳は、それにひとつ眉を上げると、桔流に従い、その視線をそっと辿る。
その視線の先には、法雨が居た。
そんな法雨は、花厳と同じようにして、入り口近くのカウンター席に腰掛ける男と親しげに話していた。
その男は、一見してオオカミ族らしいと分かる。
毛並みは、花厳と同じく漆黒で、年齢も、花厳より上であろう成熟した大人らしい雰囲気を纏っている。
また、その男は、――高身長な花厳より背が高く、人並みよりもかなり体格が良いようにも見えた。
一見するだけでも、良い意味で、非常に目立つ容姿をしている事が分かる。
花厳は、その男を一見し、そのような印象を抱くと、ふと男の瞳に目をやり、次いで、手元へと視線を戻した。
そして、男の誠実そうな海色の瞳を思い起こしながら、桔流に小声がちに問う。
「桔流君……。――もしかして、あのオオカミ族のお客さんって、法雨さんの……?」
すると、桔流は、にこりと笑んだ。
「ふふ。――分かりますか?」
花厳は、それに、微笑み返して言う。
「なんとなくね。――法雨さんを見る目が……」
「ほら。――ね」
「え?」
そんな花厳は、桔流の言葉に首を傾げる。
桔流は、言う。
「がっついてなくても、分かっちゃうでしょう?」
それに、花厳は納得した様子で笑った。
「あぁ。なるほど。――ははは。確かにそうみたいだ。――よく分かったよ」
(――という事は、俺も、いつからか、――分かる人には分かってしまうくらいには、桔流君を“見る目”が変わってたって事か)
「法雨さんは流石だね……」
そんな花厳が苦笑すると、桔流はまたひとつ笑った。
「法雨さんの勘は、めちゃくちゃ鋭いですからね」
それに、花厳も楽しげに笑うと、桔流は、手際よく仕上げたシャンパンカクテルを、花厳の前に据えた。
そして、それに礼を言った花厳が、それから桔流との談笑を交えながら、しばらくと料理やカクテルを楽しんでいると、ふと、店のドアベルが新しい来客を報せた。
その報せを受けた、店内のすべてのスタッフが店の入り口に視線をやると、
「わ……」
と、小さくこぼした桔流を除き、店内のスタッフ全員が、来客に出迎えの声をかけた。
そして、驚いた様子のまま入り口を見ている桔流を不思議に思い、花厳も店の入り口を見やると、花厳もしばし眉を上げた。




