Drop.020『 CocktailGlass〈Ⅱ〉』【3】
「えっ……。――それは、凄く意外だな」
桔流は、楽しげに笑う。
「法雨さんの店で働き始める前から、そうだったんですけど。――俺、友人や家族を置いて、クリスマスを一緒に過ごしたいって思えるような恋人、できた事なくて」
「そうだったのか」
「はい。――なので、イヴも、クリスマスも――、恋人と過ごすのは、花厳さんが初めてです」
そんな桔流に、未だ驚きの余韻を残しながら、花厳は言った。
「なんだか今年は、――早めのクリスマスプレゼントが盛り沢山だな……」
すると、桔流は、にこりと笑んだ。
「ふふ。喜んでもらえて良かったです」
そして、ふとベッドサイドを見やると、言った。
「あ。でも、――もうクリスマスになってますよ」
「え?」
その桔流の言葉に促されると、花厳もまた、ベッドサイドに置かれた時計を見た。
すると、時刻は確かにクリスマスを迎えていた。
花厳は、その事実を確認するなり、
「ほんとだ」
と、言うと、次いで桔流に視線を戻し、微笑んで言った。
「じゃあ、改めて、――メリークリスマス。桔流君」
そんな花厳に嬉しそうにすると、桔流もまた、
「メリークリスマスです。――花厳さん」
と言い、微笑み返した。
そんな二人はそのまま視線を絡めると、ゆっくりと額を合わせては、そっと口付けを交わした。
そのやわらかな感触が、再び脳を痺れさせ、心を幸福感で満たしてゆく。
(――幸せ……)
心の中、桔流はひとつ零すと、そっと抱き締めてきた花厳の首に、やんわりとその腕を回した。
そうして互いに抱き締め合い、深く食み合うような口付けを重ねるうち、彼らの理性は再びと熱に蕩け始める。
そんな――、幾度窘めても駄々をこねる熱に再びと身を寄せた二人は、それからもまた、冷めぬ熱を宥め合った。
幾度も――。
幾度も――。
かつての桔流にとって――、“指輪”とは、絶望の象徴でしかなかった。
しかし、そんな絶望の象徴は、その日をもって――、愛と幸福の象徴へと、その身を転じた――。
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