Drop.020『 CocktailGlass〈Ⅱ〉』【2】
「まさか。大歓迎です。――花厳さんがいらしてくださるの、俺は嬉しいですから」
そして、その中、
「あ。でも……」
と、ふと思い立ったように呟くと、次いで花厳の口元に人差し指を添えながら、その金色の瞳と視線を絡め、続けた。
「独り占めとお触りは、厳禁ですからね。――お客様」
花厳はそれに、楽しげに笑う。
「ははは。――はい。気を付けます」
そんな花厳に、桔流も楽しげに笑うと、花厳はまたひとつ、桔流に口付けた。
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その後。
しばらくして寝室に移動した二人は、底の見えぬ欲を再びと甘やかしては、また酷く濃密に時間を融かした。
その余韻に浸りながら、桔流は、暖かなベッドの上で上機嫌に尾を泳がせながら言った。
「――そういえば、花厳さん」
「ん? なんだい?」
その桔流の髪を愛おしげに梳きながら、花厳は微笑む。
桔流は、続ける。
「ちょっと気になってたんですけど。――花厳さん。――俺の指のサイズ、いつ測ったんですか?」
花厳は、そんな桔流の問いに、
「あぁ。それはね」
と言い、不意に桔流の右手を取ると、自身の左手と合わせるようにして組んだ。
そして、組ませた桔流の右手をそのままシーツにそっと押し付けるようにすると、言った。
「君の左手と、こうしてる時」
「えっ……うそ……」
桔流は、シーツに押し付けられた自分の右手を見るなり、目を見開く。
「こ、これだけで分かるんですか……」
「うん。なんとなくね」
そんな桔流に、花厳は穏やかに笑む。
すると、桔流は、何故か切なげな表情を浮かべると、言った。
「もう、花厳さん……。――そんなに凄いトコいっぱいなのに、なんで元恋人へのプレゼントと見間違えるような外見の贈り物とかしちゃうんですか……」
花厳はそれに、心の臓を抉られた。
「あ、あぁ……。――その、それは……、本当にごめん……。赦さなくていいけど……、――あれは本当に反省してる……」
そんな花厳は、言うなりやんわりと桔流を抱き締めると、その肩口に顔を埋めた。
桔流は、それに愛おしげに笑うと、花厳の背を優しく撫でた。
「ふふ。ごめんなさい。――冗談ですよ」
そして、
「花厳さん。ヘコむとすぐ耳下がっちゃいますね。――可愛い」
と言うと、その首筋にひとつ口付けた。
花厳は、それに、
「耳に出やすいんだよね……。――はぁ……」
と紡ぐと、またやんわりと桔流を抱き締めた。
その様子にも楽しげにした桔流は、そんな花厳を抱き締め返し、ふと話題を転じた。
「あ。そうそう。――花厳さん」
「ん?」
その桔流を抱きしめたまま、花厳は応じる。
桔流は、続ける。
「実は俺、――恋人とイヴを過ごすの、これが初めてなんです」
すると、それに身を起こした花厳は、しばし驚いたようにして言った。
「え? ――そうなのかい?」
しかし、言うなりすぐにはたとした花厳は、
「あ。でも、そうか。――イヴは、お互いが仕事だったりとか」
と推察した――のだが、桔流がさらに、
「クリスマスも、――初めてなんです」
と重ねると、花厳は再び驚き言った。




