Drop.019『 CocktailGlass〈Ⅰ〉』【4】
「“つい”? ――“つい”、なんですか?」
「え?」
桔流の言葉に、花厳はまた、桔流の瞳を見つめ返す。
桔流は、微笑みながら、伺うようにして続けた。
「“そのつもりで”――、じゃなくて?」
花厳は、それにひとつ間を置くと、しばし真剣な面持ちで言った。
「――“そのつもりで”、でも……、――いいの?」
桔流は、そんな花厳に、目を細めて笑み、言った。
「花厳さんが本気なら、――“いい”ですよ」
花厳は、さらに問う。
「本当に?」
桔流は、にこりと頷く。
「はい……」
そして、次に愛らしく首を傾げると、続けた問うた。
「でも、花厳さんは、――それで、後悔しないですか?」
それに、花厳は、はっきりと言った。
「もちろん。――後悔なんて、するわけがない」
すると、それにくすぐったそうに笑った桔流は、次いで、しばし上目遣いに問う。
「じゃあ……。――浮気も、しないですか?」
そんな桔流に、穏やかに笑んだ花厳は、それにもはっきりと言った。
「しないよ。――こんな素敵な恋人が居るんだから。――浮気なんて、頑張っても出来ないよ」
桔流は、それにまたくすぐったそうにすると、
「ふふ。――だといいですけど」
と言い、幸せそうに笑った。
そんな桔流が、またひとつ、嬉しそうにリングを撫でると、今度は花厳が言った。
「桔流君は?」
それに、桔流は首を傾げながら言った。
「俺? ――浮気ですか?」
花厳は、眉根を寄せて笑う。
「ははは。――違う、違う。――そこはまったく心配してないよ」
そんな花厳は、すっと桔流の頬に手を添えると、しばし赤らんだ頬を撫でながら続けた。
「桔流君は――、俺で、後悔しないの?」
桔流は、それに微かに目を見開くと、微笑み、言った。
「もちろん。――しないですよ。――“後悔なんて、するわけがない”、です」
花厳は、そうして、少しばかり前に自身が紡いだ言葉を重ねた桔流に、額を寄せると、さらに問うた。
「本当に?」
問われた桔流は、直接触れ合わずとも花厳の体温を感じるほどの距離で、花厳を見つめ返し、ひとつ瞬くと、言った。
「はい……」
花厳は、それにひとつ笑みを零すと、絡めた視線をほどくなり、花厳を誘うようにうっすらと開かれた柔らかな薄紅色に口付ける。
そして、少しだけ離すと、微かに触れ合わせながら紡ぐ。
「良かった。――幸せにするよ」
花厳の腕の中、桔流は笑みを零す。
「ふふ。――俺、今でも十分すぎるほど幸せなんですけど……。――もっと上があるんですか?」
花厳は、そんな桔流の頬をまたひとつ撫で、言う。
「もちろん。あるよ。――楽しみにしてて」
それに、桔流は幸せそうに笑う。
「ふふ。はい……」
その桔流に、またひとつ笑むと、花厳は言った。
「そうだ。それと。――今回は一応、普段の贈り物のひとつとして買ったものだったから。――今度、“そのつもりの贈り物”も、ちゃんと用意したいんだけど……。――いいかな? ――逃げるなら、今のうちだけど」
桔流は、それにも嬉しそうに笑う。
「ふふ。“逃げるか、逃げないか”。――選ぶまでもない選択肢ですね……」
そんな桔流に、花厳は悪戯っぽく問う。




