Drop.018『 Shake〈Ⅱ〉』【6】
「――じゃあ、どうして家まで来てくれたの? ――あれを“同じ物”だと思ってたのなら、俺には相当幻滅してたと思うし、俺の家に来るのだって、本当は嫌だったんじゃない?」
それに、桔流は黙した。
「………………」
「……?」
その様子に、花厳が不思議そうにしていると、桔流はまた不満げな声で、言った。
「……どうせなら……最後に………………、――胃袋掴んでやろうと思っただけです……」
すると、その予想外の答えに、ひとつ眉を上げた花厳は、思わず笑みを零すなり、桔流をぎゅっと抱きしめると、酷く嬉しそうに言った。
「――桔流君。――その理由は、可愛すぎるよ」
それに対し、桔流は、花厳の腕の中で、
「……ふん」
とだけ言うと、照れ隠しなのか、そのまま花厳のコートの中に顔を埋めた。
花厳は、その様子をまた酷く愛しく感じ、桔流の髪に軽く口付けると、再びそっと抱き寄せた。
それから、しばらくの沈黙を挟んだ後。
桔流が、花厳の名を呼んだ。
「――……花厳さん」
花厳は、それに愛おしげに応じる。
「なんだい」
そんな花厳を抱き締め返すようにすると、桔流は続けた。
「俺を、選んでくれて――、俺を、好きになってくれて――、ありがとうございます……」
それに目を細めると、愛おしげに微笑み、花厳は言った。
「――こちらこそ」
そして、さらに紡いだ。
「――桔流君。――またここに来てくれて、ありがとう」
桔流は、それに、顔を上げると、
「……はい」
と、微笑んだ。
花厳は、その桔流の頬に手を添えると、そっと口付ける。
そして、恋しくすら感じていた、久方ぶりのその感触を幾度か確かめ合うようにした後――。
二人は、再び互いに抱き締め合うと、その幸せで心を満たした。
互いの温もりを通じ、確かに“ここ”に居ると感じ合える――安心感。
互いとの触れ合いを通じ、その存在を肌で感じ合える――幸福感。
そんな、かけがえのない充足感を噛みしめるようにして、それからも二人は、しばらくの間、ただひたすらに抱き締め合った。
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