Drop.018『 Shake〈Ⅱ〉』【4】
(確かに、それについては、法雨さんも“無神経”ってストレートに言ってたけど……。――それでお姉さんにめちゃくちゃ怒られる花厳さん……、――なんか……想像つくな……)
そして、ひとつ思いながら、しょぼくれた花厳の話から視えた想像上の想い人に、桔流は、つい笑いそうになるのを咄嗟に堪えた。
そんな桔流の前では、その漆黒の耳と尾をすっかりと垂れさせて落ち込んだ様子の花厳が、深い反省を続けていた。
「本当に、ごめん……」
しかし、その花厳が、思った以上にヘコんでいるため、桔流は、なんと声をかければ良いか分からなくなり、
「あ。あぁ……ええと……」
と、言葉を探し回りながら、花厳と手元のリングを交互に見た。
すると、そんな桔流の様子から勘違いをしたのか、花厳はしばし明るく言った。
「あぁ。それも、流れで押し付けちゃってごめんね。――もちろん、それはつけなくていいよ。――受け取るのも嫌だったら、返してくれても大丈夫。――桔流君。モノが残る贈り物は避けてるって言ってたから、迷惑かもとは思ったんだけど……シルバーリングも好きだって言ってたから、それがどうしても頭に残っててね。――そんな時に、たまたま似合いそうなのを見かけてしまったものだから、その勢いで、勝手に買っちゃったんだ……。――でも、嫌だったら本当に」
その中、そう言いながら、花厳がふと桔流を見ると、大切そうに贈り物を持った桔流は、何故かそのまま俯いてしまっていた。
その様子を案じ、花厳は、その名を呼んだ。
「桔流君……?」
桔流は、そんな花厳からの気持ちを、心から嬉しく思った。
だが、今の桔流は、まだ、その事を心から喜ぶ事はできない。
桔流には、まだ、確かめなければならない事があるのだ。
桔流は、案じるようにした花厳に、俯いたまま、ゆっくりと紡いだ。
「花厳さん。――……前の恋人さんは、本当に、もういいんですか……。――本当は、まだ、その方に望みを持ちたいんじゃないんですか……? ――花厳さん。言ってましたよね。――例え、怒って帰っちゃっても、必ず電話がかかってきて、会いたいって言われるって。――なら、今回も、そうやってまた、もう一度やり直したいって、言ってくれるかもしれませんよ」
どうしても、声が震える。
花厳も、きっと、それに気付いているだろう。
だが、それでも花厳は、決して、情から嘘を紡ぐような様子もなく、はっきりと答えた。
「――それは、ないよ。――前に君に話した通り、今のあの子には、ちゃんと別の恋人が居る。――と、いうのと、これは話してなかったけどね。実は、二人は随分前から付き合っていたらしいんだ。――それに、別れ話をした後は、あちらからの連絡は一切来ていないし、俺からも、一切連絡を取ってない。――それに、俺は、あの子との復縁も望んでないから、希望があろうと、俺が何か行動を起こす事もないよ。もちろん、あの子からどれだけお願いされてもね。――悪いけど、俺はもう、君しか見えないから」
その言葉に、さらに俯いた桔流は、声を震わせながら言った。




