Drop.018『 Shake〈Ⅱ〉』【3】
(これは……)
そんな“瑠璃色”の中に佇んでいたのは、上品ではありながらも、着飾りすぎない程度の包装が施された、小ぶりの包みであった。
それは、桔流が必死で花厳を探し回った、あの夜に“瑠璃色”の中で佇んでいた、――“一世一代”を思わせるような包装が施された“指輪”とは、まったく異なる様相をしていた。
(違う。――これは、確かに、“あの時の”じゃない……)
桔流は、それにしばし安堵すると、意を決して包みを取り出し、花厳を見た。
花厳はそれに、黙したまま穏やかに笑むと、次いでひとつ瞬きながら頷いた。
桔流は、そんな花厳に背を押されるようにして、丁寧に包みを開封した。
そして、言った。
「――これ……」
上品な包装から顔を覗かせた、シックなデザインの化粧箱を開ければ、そこには、確かに指輪が据えられていた。
その指輪は、美しい曲線が組み合わさったデザインの、シンプルなシルバーリングであった。
桔流は、中身さえ見ればすぐに分かる――と言った、花厳の意図を理解した。
そのリングは、大変美しくはあったが、宝石などは一切飾られておらず、“婚約指輪”として贈るには、少々シンプル過ぎるデザインと云える様相をしていた。
また、今、桔流を見守っている花厳にも、嘘を吐いているような素振りは見受けられない。
(じゃあ……、これは……)
桔流が思うと、花厳は言った。
「本当にごめんね。――酷い勘違いをさせた上に、俺が考えなしなせいで、余計に傷つけて……。――桔流君は、箱の中までは見ていないから、信じて貰えるか分からないけど……、――でも、正真正銘。これは、“あの時”の物とは一切関係ない、まったく違う物。――これは……、あの日の前日。――君への贈り物として買った物なんだ」
桔流は、凛と佇むリングを見つめ、言った。
「そう……だったんですね……」
「うん」
そんな桔流に頷くと、花厳は続ける。
「――俺。こういう事に本当に鈍くて……。――姉に言われるまで、全然気付かなくて……」
そうして、心底反省しているらしい花厳に、桔流は、はたとして問う。
「お姉さん……ですか……?」
そういえば花厳は、先ほど、確かに“姉”についての話をしていたような気がする。
花厳は、言う。
「そう。――少し前、ちょっとした用事で、ここに姉が来てね。――それでその時、置きっぱなしにしてしまってたこの贈り物を見られて、言われたんだ。――“未練がましくまだ持ってるの?”って……。――で、その時に気付いたんだ。――あの時。桔流君がお店でずっと預かっててくれたのも、ブランドどころか、見た目までまったく同じ物だったって」
「――……な、なるほど」
そんな花厳の話によれば、その姉とやらに問い詰められる中で、“以前の贈り物を見ている上、経緯まで知っている現在の想い人に対し、まったく同じ見た目の贈り物をしようとした”――という事もバレてしまったらしく、その後、その事も散々と叱られたらしい。




