Drop.018『 Shake〈Ⅱ〉』【2】
(ほらな……。――だから、言ってんだろ。――希望なんて持ったって無駄)
「――俺……、袋のデザインの事とか、全然頭になくて……」
「――………………。――……え?」
花厳は、確かに、桔流の希望には沿わない言葉を紡いだ。
しかし、それは、桔流を絶望に追いやるのにも、力不足な言葉であった。
その事に、桔流は戸惑い、困惑する。
(“袋のデザイン”って……)
花厳は、続けた。
「実は、ちょっと前。この家に姉が来たんだけどね。――その時に言われた事で、初めて気付いたんだ……。本当にごめん……」
恐らく、花厳は、今。
桔流が、花厳の言葉の意をすべてを理解しながら話を聞いていると思っているのだろう。
しかし、それは大きな間違いだ。
桔流は、連ねられた花厳の言葉の意を、一切解せていない。
それゆえ、しばし強引に話に割り込み、桔流は言った。
「――あ、あの。ちょっと待ってください。――その……、“袋のデザインの事とか”って……、つまり……。――あの日に出した贈り物って、――以前、うちの店で預かってた贈り物と、同じ物じゃなかったんですか?」
そんな桔流の問いに、
「え? “同じ物”って……」
と、花厳は、しばしきょとんとしたが、すぐにハッとすると、
「――あ。……あぁ! そ、そうか……」
と、言い、またひとつ詫びた。
「――ごめん。そんな勘違いもさせてたのか……。――俺は本当に、こういうところが駄目なんだよな……」
桔流は、そんな花厳に未だ困惑しながらも、問うた。
「あの……、どういう事ですか?」
花厳は、随分と反省しているらしい様子で言った。
「えっと。――まず、なんだけど、――桔流君を帰らせてしまったあの夜に桔流君に見せたのは、前にお店で預かってもらっていた――“前の恋人のために用意した贈り物”とは、まったくの別物なんだ。――実は、俺の友人が、あのブランドの関係者でね、――ああいう贈り物をする時は、あのブランドのものを買うのが、俺の中でのお決まりになってたんだ……。――だから、今回の君への贈り物が、“前にお店に忘れた物と同じ見た目”になってしまったのは、それが理由で……」
そんな花厳は、そこまで言うと、
「――ちょっと、待ってね」
と、言い、リビングより手前にあるドアを開けると、寝室へと入っていった。
そして、すぐに戻ってくると、花厳は、その手に、あの“瑠璃色”を持っていた。
「――……」
花厳は、その光沢感のある瑠璃色に、思わず身を固くする。
戻ってきた花厳は、今度はそのまま桔流の前までやってくると、その“瑠璃色”をそっと示し、言った。
「――これ。――受け取らなくて大丈夫だから、開けて、中身の確認だけしてみてくれるかな。――多分、贈り物の中身さえ見てくれれば、あの時の物とは“違う物だ”って、すぐに分かると思うから」
桔流は、それに、思わずたじろぐが、
(大丈夫。大丈夫だ。――これは、あの時の“指輪”とは、違う物なんだ……)
と、なんとか自身に言い聞かせ、恐る恐る“瑠璃色”を受け取った。
そして、強張る身体を宥めながら、まずはゆっくりと瑠璃色の中を覗く。




