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恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ Recipe choice ◆

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Drop.002『 Recipe choice〈Ⅱ〉』【3】

 男とのやりとりを丁寧に終えた後。

 桔流は、持ち主のもとに帰れなかった瑠璃色と共に事務所へ戻り、事の次第を法雨に伝えた。

 ――強引にでも返してらっしゃい……!

 事務所に戻るまでの間。

 そんなお叱りが飛んでくる事も、桔流は覚悟していた。

 しかし、その桔流の覚悟をよそに、実際の法雨は涼しい顔で言った。

「――そう。――じゃあ、このコは、またしばらくお預かりしておきましょ」

 そんな法雨に、桔流はやや動揺する。

「い、いいんですかね」

 法雨はそれに、穏やかに微笑む。

「大丈夫よ」

 そして、不安そうにする桔流から瑠璃色を受け取りながら続ける。

「お客様がそう仰ったのなら、こちらはご希望通り保管しておけばいいの。――それに、必要になったら意地でも返して貰いに来るわ。――だから、心配しないで大丈夫」

「はい……」

 桔流は、そんな法雨の言葉に、できれば心から頷きたかった。

 だが、できなかった。

 もちろん、今回においては、男の気持ちを優先する事はできた。

 しかし、今回の件を経た事で、桔流はより一層“あの日”の事を悔やまずにはいられなくなったのだ。

(やっぱり、あの日に俺がもっと早く気付いて、あの日のうちに返す事ができてたら、こんな事にならなかったんじゃ……)

 そんな桔流の心境を察したらしい法雨は、思い悩むようにする桔流を前に、静かに苦笑した。

 だが、すぐに何かを思い出したかのようにすると、

「あぁ、そうだ。それと、桔流君。――今は納得がいかなくても、これだけは約束してちょうだい」

 と言うなり、桔流に向かって人差し指を立てた。

 桔流はそれに首を傾げ、

「? なんでしょう?」

 と、言った。

 法雨は、続ける。

「今後は、お客様自身が話題に出さない限り、忘れ物の話題は出しちゃだめよ」

 そんな法雨の言葉を受け、桔流はふと、先ほど自身に向けられた――あの、物悲しさを秘めた男の笑顔を思い出した。

 加えて、その後に見せられた、痛みから解放されたかのような笑顔も――。

 桔流は、そんな男の心を想い、法雨の言葉を改めて反芻すると、ひとつ思う。

(時間が……いるのかもな……)

 そして、その一旦の着地点に辿り着いた桔流は、今度はしっかりと法雨に目線を合わせて言った。

「分かりました。――今後は、こっちからは何も言わないようにします」

 すると、法雨は微笑みながら頷いた。

 そんな法雨は、次いで自身のデスクを見やる。

 そこでは、瑠璃色の贈り物が上品に佇んでいる。

 その瑠璃色を、桔流もふと見る。

 法雨は、静かに言った。

「往々にしてあるものなのよ。自分の手だけでは、どうにもできない事がね」

 桔流は、そんな法雨のこぼした言葉を静かに聞いた。

 そして、再び保管棚に優しくしまわれてゆく瑠璃色を見送りながら思う。

(あんなに綺麗にしてもらってここまで来たのに、用無しなんて、可哀想にな……)

 法雨の言葉は理解しているつもりだし、納得もしたつもりだ。

 無論、自分では、あの瑠璃色を救ってやれない事も、重々承知しているつもりだ。

(分かってる。――分かってるけど、でも……)

 そうであっても桔流は、瑠璃色に包まれた、あの――“誰かを幸せにできるはずだったモノ”の無念を、想わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

Next → Drop.003『 Shaker〈Ⅰ〉』

 

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