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恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』全21話  作者: 偲 醇壱
◆ Shake ◆

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Drop.017『 Shake〈Ⅰ〉』【2】

「――はい」

 それに、法雨もひとつ瞬き微笑むと、言った。

「それじゃあ、行ってらっしゃい。桔流君」

 そんな法雨に、桔流はしっかりと頷き、応じた。

「はい。――行ってきます」

 その後。

 すでに緊張し始めている己の心を宥めながら、更衣室での着替えを終えた桔流は、ふとスマートフォンに目を向ける。

 そして、軽く深呼吸をすると、退勤をした旨を伝えるメッセージを打ち込み、送信した。

 すると、返信はすぐに返ってきた。

[今、電話して大丈夫かな]

 桔流はそれに、

[大丈夫です]

 と、返信しつつ、店の裏口の扉を開いた。

 そこでひとつ空を見上げれば、しばし曇った夜空が、桔流を穏やかに見返す。

 しんしんと冷え込んだ夜の風は、今宵も、雪をも予感させるほどに冬らしいものとなっていた。

「さっむ……」

 そんな夜風に桔流が言うと、コートのポケットの中でスマートフォンが震えた。

 スマートフォンを見れば、そこには着信画面が表示されている。

 桔流は、その表示を見ながらひとつ深呼吸をすると、通話ボタンを押した。

「――はい」

『桔流君。お疲れ様。――電話で大丈夫だったかな』

 スマートフォンに繋がれたイヤフォンを伝い、久方ぶりに聴くその声に、桔流は、己の心が酷く満たされるのを感じた。

(重症だな――)

 桔流は、それに苦笑すると、花厳(かざり)に言った。

「お疲れ様です。はい。大丈夫です。――もう、店も出たところなので」

 花厳は、安堵したような声で言う。

『そうか。良かった。――じゃあ、近くまで車で向かうから、少し待てるかい?』

 桔流は、街中を進みながら頷く。

「はい。大丈夫です」

 運転中なのか、イヤフォン越しにカチカチと微かなウィンカー音を響かせながら、花厳は言う。

『分かった。――じゃあ、着いたらまた連絡するよ。――あ。すぐに着くけど、外は冷えるから、暖かい所に居てね』

 桔流は、どのような経緯を経ても、決してその優しさを欠く事のない花厳に微笑み、頷いた。

「――はい……」

 桔流は、その後。

 通話が終了した事を示す画面表示を、しばし眺めてから、顔を上げた。

(花厳さんが来るまで、どこに居ようかな。――暖かい所って言われたけど……、今は、風にあたってたいかも。――と、なると……)

 そして、桔流は、ふと思い立つと、近場の公園に向かう事にした。

 そんな桔流は、昨夜。

 久方ぶりに、花厳へのメッセージを打っていた。

 花厳の話を最後まで聞かず、酷い言葉を乱暴に吐き散らし、礼儀もなく家を出て行った事――。

 花厳からのメッセージに、永らく返信をしなかった事――。

 昨夜綴ったメッセージでは、まず、それらの無礼を謝罪した。

 そして、その上で、

[もし、花厳さんさえ良ければ

  会って話がしたいです]

 と、添え、メッセージを締めくくった。

 目的地の公園までやってきた桔流は、ベンチの背もたれに腰掛けると、そのメッセージを見返した。

(――ちゃんと話そう……)

 桔流は、ひとつ深呼吸をする。

 過去、何かと迷いがちであった花厳に偉そうな事を言っておきながら、同じ立場になった途端。

 自分は、身動きすらとれなくなった。

 だが、法雨も言っていた通り、何もせずに居れば、本当にこのまま――、花厳の事を何も分からないまま――、すべてが終わってしまう。

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