Drop.016『 LemonJuice〈Ⅲ〉』【5】
琥珀色の海は、氷と共に、グラスの中に美しいグラデーションを描き始める。
それを一口味わえば、彼らが織り成す最高の味わいが、その舌を満たす。
そのように、グラスの中に、琥珀色と氷のみを注げば、その飲み方らしい味わいを楽しむ事が出来る。
そして、さらに多彩な材料を適量ずつ注ぎ入れ、適した方法で仕上げれば、様々な味わいのカクテルたちで、その舌を満たす事もできる。
しかし、そんなカクテルたちが、最高の味わいを成すには、まず、それぞれがひとつのグラスの中に集わなければ始まらない。
つまり、憶測だけを並べても、最高のカクテルなど、ひとつも生まれないのだ。
こうすれば美味くなるだろうか――。
こうすれば、あの人が喜んでくれる味わいになるだろうか――。
そんな憶測だけを並べても、最高のカクテルが、そこに現れる事はない。
つまり、どれほどに最高級の材料を揃えたとしても、同じグラスに入るまでは、彼らがどのような味を成すかは、分からないのだ。
どうすれば最高の味を成せるか――。
それを知るには、まず、――互いが同じグラスに入らなければ、始まらない。
そして、それと同じく、人と人も、憶測だけを繰るのでは、互いの事など、何も分かりはしない。
憶測だけを繰るのでは、その関係は、一歩たりとも前に進みはしないのだ。
すべては、その心を互いに晒し合い、ひとつのグラスの中で向かい合った時にこそ、本当の始まりを迎えられるのだ。
Next → Drop.017『 Shake〈Ⅰ〉』




