Drop.016『 LemonJuice〈Ⅲ〉』【2】
すると、すべての事情を聞いた法雨は、桔流を放っておけなかったのか、しばらくは法雨の家に居候する事を、桔流に“命じた”。
そうして、法雨が“命じた”のは、そうしなければ、桔流はまた独りを選び、同じようなヤケを起こすと見抜いていたからだろう――。
当時の法雨が、敢えて居候を“強制した”理由を、後の桔流はそのように判じた。
そして、それから一か月ほどの間は、法雨が店に居る際には、桔流も店の事務所で事務仕事を手伝い――、閉店後は、法雨と共に法雨の家に帰り、法雨と過ごす――、というようにして、一日のすべての時間を法雨と過ごした。
また、そのような生活を続ける中、桔流の心が少しずつ癒されてゆくと、桔流は正式に、法雨の店のバーテンダーとして働く事となった。
だが、稀に心の傷が疼き、不安定になる事もあったため、それ以降も桔流は、しばらく法雨の家に居候を続けた。
そんな桔流が、法雨と体の関係をもったのも、この時期の事であった。
桔流が不安定な夜は、多少の酒は赦したが、それだけで眠れない日は、法雨が桔流の思考を遮断させる事で、酒に頼らせ過ぎないようにしたのだ。
その度に、桔流は声を震わせ、謝った。
そして、その度に、法雨は言ったのだ。
――言ったでしょ。謝罪は要らないわ。
――これはアタシが好きでやってる事だしね。
――それと、謝るくらいなら、大人しくアタシに可愛がられてなさい。
――独りでなんとか出来るほど、本気の恋の傷って、軽いものじゃないのよ。
――だから、その傷が癒えるまで、アナタはただ、自分の心を癒す事だけ考えてなさい。
――アタシへの謝罪も恩返しも、すべてはそれからよ。
そして、そんな法雨の支えによって、徐々に心の傷を癒してゆく事ができた桔流は、その居候生活を終えた後も、恩返しとして、法雨のバーで働き続ける事を決め、今に至る――。
また、その当時の桔流は、恩を返しきるまでは無給で働かせてほしいと頼んだりもしたのだが、法雨がその頼みを呑む事はなかった。
そんな法雨を、今、久方ぶりに心の薬としている桔流は、法雨に言う。
「――なんで、諦めて離れるのすら、上手くいかないんですかね……。――先生ン時は、引きずりはしたけど、諦める事自体は早く出来たのに……」
それに、法雨はしばし考え、言った。
「――……ねぇ、桔流君。アナタは、今の自分には、“二度ある事は三度ある”って言葉がしっくりくるって思う?」
それに、桔流は頷きながら言う。
「そう……ですね。――現状が物語ってますから。――……まぁ、回数としては、今回が二度目ですけど」
「なるほど。――まぁ、そうね」
そんな桔流に、法雨は頷き、続ける。
「――確かに、もし、“今回がまた同じ結果になるのなら”、これが二度目になるわね。――でもね、桔流君。――この世には、“二度とない”って言葉もあるでしょ」
「え?」
桔流は、それに、問うように首を傾げる。
法雨は、さらに紡ぐ。




