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恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』全21話  作者: 偲 醇壱
◆ LemonJuice ◆

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Drop.016『 LemonJuice〈Ⅲ〉』【1】

 

 

 

 グラスの氷は、琥珀(こはく)色の海にすっかりと溶け入ると、――“あの日”の空を染めていた夕陽のように、美しいグラデーションを描き出していた。

 桔流(きりゅう)は、そのグラスを手に取り、揺する。

 すると、夕空は静かに掻き消えた。

 そんな美しい夕暮れを機に――、“指輪”そのものや、“指輪”という文字や音に異常なほど過敏に反応するようになった桔流は、それから、その苦痛に散々と苦しむ日々を過ごす事になった。

 

 

― Drop.016『 LemonJuice〈Ⅲ〉』―

 

 

 桔流は、今でこそ無理に笑む必要のない日々を過ごせるようになったが、失恋の傷が色濃く残っていた当時は、何かしらの形で指輪を見るだけでも呼吸が乱れ、タイミングが悪ければ、身動きすらとれなくなる事も度々とあった。

 そして、誰ともなしに、ただ独り、“嫌だ”、“行かないで”――と、声を殺しながら嗚咽する夜もあった。

 そんな桔流が、指輪を目の前にしても平然と過ごせるようになり、指輪を手に取る事さえ問題なく出来るようになったにも関わらず、花厳に対し“嘘”をついたのは、ほかでもない。

 “自分の心を護ろうとした”からだ。

 勿論、嘘を吐いた時の桔流は、自分を護ろうという意識はなく、ほぼ無意識に嘘をついたようなものだった。

 だが、今にして思えば、桔流自身が気付いていなかっただけで、そのような嘘を咄嗟についてしまうほどに、過去の傷は完全には癒えてはいなかったのだ。

(――やっぱ、忘れられてなかったな……)

 そして、そんな桔流が法雨(みのり)と出会ったのも、その時期の事であった。

 当時の桔流は、心の傷をなんとか和らげるため、毎日のように大量の酒に救いを求めていた。

 そして、日によっては、一晩限りの相手と夜を過ごす事でも、その心の痛みを和らげていた。

 だが、そんな日々を送っていた、とある夜の事。

 運悪く、“指輪”との接触を経てしまった桔流は、いつも以上に強い苦しみに襲われていた。

 それゆえ、その激しい苦痛をなんとか凌ごうと、いつもよりも強い酒を大量に流し込んだ桔流は、その晩。

 それまでにないほどに、酷く酔ってしまっていた。

 それにより、帰路を辿る事も出来なくなった桔流は、壁伝いに歩き回った果てに、法雨のバーの裏手で倒れ込んでしまったのだった。

 そこで、倒れ込んでいる桔流を見つけたのが法雨であった。

 そんな桔流は、その後。

 今では桔流の先輩となるスタッフたちと法雨により、すぐに更衣室に運び込まれると、アルコールに侵され、凍えきった身体を丁重に介抱された――、というわけなのだが、そのようなきっかけを経た結果、桔流は法雨と知り合う事になったのである。

 そして、元々責任感が強く、義理堅い性格であった桔流は、その翌日。

 迷惑をかけた事を幾度も謝罪し、何をすれば償いになるかと、法雨に必死に問うた。

 だが、そんな桔流に、法雨は言ったのだ。

 ――謝罪も償いも要らないわ。

 ――でも、その代わりに教えてちょうだい。

 ――そんな風に、責任感もあって、ちゃんと謝れるアナタが、どうしてそんなヤケになってるのか。

 ――全部、正直にね。

 そして、その法雨の言葉に従った桔流は、それまでのすべてを法雨に打ち明けたのだった。

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