Drop.015『 LemonJuice〈Ⅱ〉』【2】
そんな桔流が、初めて恋をしたのは、――桔流が所属していた研究室を担当する教授だった。
また、その教授も、成績優秀で、自身が担当する分野に意欲的な桔流を、大層気に入っているようであった。
そのような事もあってか、教授は、桔流が初恋を経験する前から、助手役として、事あるごとに桔流を連れ立った。
時には、教授と学生という関係性はそのままに、二人で飲みに行く事もあった。
そのような中で、教授は、度々と桔流を褒め、称賛し、桔流という存在への喜びを言葉にした。
無論、そこに、下心などはなかった。
その証に、教授は、桔流に対し、一度たりとも下心を思わせるような行いをしてこなかった。
だからこそ、桔流は、その教授に惹かれ――、恋をした。
そして、その恋心を、より一層大きなものにしたのは、――教授がバイセクシャルである、という事実だった。
その事実が判明したのは、二人きりの研究室で、何気ない雑談をしていた時の事だ。
「――桔流君もそうだったんだね」
夕陽の差し込む静かな研究室で、教授が穏やかに言うと、桔流はにこりと笑む。
「はい。――あ。因みに先生は、今、どちらとお付き合いされてるんですか?」
そんな桔流の問いに少し慌てると、教授は気恥ずかしそうに言う。
「あ、あぁ。僕かい? ――いやぁ、ははは。それが。その。実は僕。今は、フリーってやつなんだよね。――恋愛経験が少なくて……なかなか……」
桔流は、それにも笑んで言った。
「ふふ。なるほど。――でも、恋愛って焦ってするものでもないと思いますし。――本当に好きな人が居ない時は、フリーでも、全然いいと思います」
そして、桔流は、その日をかっかけに、教授の恋人になる事を夢見るようになった。
そんな桔流は、その翌日から、より一層、教授との時間を多く持つようになった。
すると、日々の努力が実っての事か、少しずつながら、教授は、桔流に対してスキンシップをとってくれるようになっていった。
その中、さらに、桔流が頭を撫でられるのが好きだと知ると、二人きりの時は、褒め言葉を紡ぎながら、桔流の頭を撫でてくれるようにもなった。
そうして、すっかり恒例となったスキンシップをとりながら、教授は、その日も桔流に笑んだ。
「桔流君が色々と頑張ってくれるから、僕も研究が捗るよ。本当にありがとう。――でも、最近は、恋愛の事を色々教えて貰ってる分、どっちが先生だか分からなくなってきたね」
桔流は、その大きな手の温もりの余韻に浸りながら、笑う。
「ふふ。俺はただ経験した事をお話ししてるだけですから。――そんな大した事はしてませんよ」
そんな桔流に微笑み返すと、教授は言った。




