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Drop.014『 LemonJuice〈Ⅰ〉』【5】
「アナタ。こないだ裏口にいた時。――“あの時”よりも酷い顔してたのよ」
「え……、そんなに……でしたか……」
「そうよ」
法雨は、ゆっくりと頷いた。
「――だから、妙に心配なのよ。――ねぇ、桔流君。アナタ、結構前に、“あの事”はもうふっきれたって言ってくれたけど、――本当は、まだ忘れられてないんじゃないの……?」
真っ直ぐに向けられた法雨の双眸に射られ、桔流はその瞳を揺らがせる。
その時。
桔流の前に置かれたグラスの中で、バランスを崩した氷がからんと音を立て、アルコールの海に沈んだ。
桔流は、その音につられ、ふとテーブル上のグラスを見た。
そのグラスには、赤みを帯びた琥珀色の海があった。
その海の色を、桔流は懐かしく感じた。
確か“あの時”も――、空は、こんな色をしていた。
かつて、心から想った愛しい人との、最期のひと時を過ごした、“あの時”の夕暮れ――。
それは、桔流が、大学生としての日々を過ごしていた際の事であった――。
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