Drop.012『 WhiteCuracao〈Ⅰ〉』【5】
「それで、俺は、――自分が桔流君の事を好きになってた事に気が付いたんだ」
「なるほど……」
桔流は、納得した様子で言う。
「――そういうところで気付くんですね……」
花厳は、苦笑して言う。
「あくまでも“俺は”、ね。――もしかしたら、人によっては他の事で気付く人もいるかもしれないけど、――でも、比較的、俺はこうやって自覚する事が多いかな」
「そっかぁ……。――う~ん……」
そして、そんな花厳の言葉を噛み砕きながら、桔流は少し考えるように黙した。
しかし、それからしばらくして、
「うう~ん˝ん˝ん˝~……」
と、難儀そうな声で鳴いたため、花厳はおかしそうに笑いながら言った。
「ははは。駄目そうかな?」
すると、再び花厳の胸元に顔を埋めては、ぐりぐりと掘削するようにした桔流は言った。
「はい……。――色々想像してみたんですが、俺には、まだ“どっちか”、判断できないみたいです」
「そうか」
花厳は、そんな桔流の髪を優しく撫でながら言う。
「――でもまぁ。焦って答えを見つけようとする事はないよ。こういう、心の動きに関する事は、焦っても悪い方向に進むだけだからね。――だから、この件についても、桔流君の心のペースに合わせてで大丈夫さ」
「はい……」
すると、花厳の言葉に渋々といった様子で頷いた桔流は、次いで、はたとして言った。
「あ、でも、――“二股はやだな”って思いました」
「えっ、“二股”?」
「はい」
花厳は、そんな桔流に言う。
「そうか。――でも、その件については安心していいよ。――二股をするなんて事は、絶対にないから」
それに、桔流は首を振る。
「あ。ごめんなさい。違うんです。――勿論、花厳さんはそんな事しないと思うんですけど。――でも、“だからしないで”って言いたかったんじゃなくて、――どんな形でも、二股になってしまうのは落ち着かないので、“もし花厳さんが他の人を好きになったら、その時は遠慮なく言ってくださいね”――って事です」
「あぁ。なるほど」
「はい」
桔流が頷くと、花厳は苦笑して言う。
「“他の人”――か……。――君が居る今は、君に頼まれたとしても、君以外の人を好きになるのは無理だな」
「ふふ」
そんな花厳に笑うと、桔流はひとつ思う。
(未来の事なんて、分かんないのに。――そうやって言いきっちゃうトコが、花厳さんのいいトコロだな)
そして、自身の心が妙に温かみを帯びている事を、桔流は不思議に思った。
(あれ、――……なんか今、ほっとした……。――俺、もしかして、――花厳さんが他の人の事好きになるの……)
そんな中、桔流が自問を展開していると、花厳が言った。
「あぁ。もうこんな時間だ。――そろそろ寝ようか。――今日も、大分長く付き合わせてしまったし」
桔流は、そう言って苦笑する花厳に楽しげに頷く。
「ふふ。はい。――俺としては、まだまだお付き合いできますけどね」
すると、花厳は笑い、
「それは魅力的な話だ。――でも、今日はここまで。――俺の欲を甘やかしてもらうのは、また次回お願いするよ」
と言うと、片腕で桔流を抱くようにして、その額にそっと口付けた。




