Drop.012『 WhiteCuracao〈Ⅰ〉』【4】
「それに、花厳さんの匂いってなんか興奮するし、――花厳さん上手だから、シてる時なんて何も考えられなくなるくらい凄い気持ちいいし、優しい花厳さんにマジで激しくされて滅茶苦茶にされてみたいとかも思ったりするんですけど……」
「え、えっと………………う、……うん……」
「――なのに……」
桔流は、花厳の胸元に額をひとつ擦ると、目を伏せる。
「――じゃあ、この気持ちが、花厳さんを恋愛的に好きだっていう気持ちなのかって考えたら、――やっぱり、分からないんです」
「……なるほど」
花厳がそれにひとつ添えると、桔流は頷き、新たに紡ぐ。
「ねぇ、花厳さん。――どうすれば、それが恋愛感情かどうか分かるんでしょう? ――花厳さんは、どんな時に恋愛感情を自覚するんですか?」
そんな桔流に、花厳は愛おしげに微笑むと、言った。
「そうだねぇ。――……これは、ちょっと情けない話だから……、あんまりしたくなかったんだけど。――でも、これが桔流君のヒントになるなら、いいかな。――あ。聞いても幻滅しないでね」
花厳の言葉に、桔流は楽しげに微笑む。
「ふふ。しないですよ。――花厳さんが自分で情けなさ過ぎて、取れそうなくらい耳が下がりきっちゃう話でも、絶対に幻滅しません。――だから、教えてください」
花厳も、それに楽しげに笑い返すと、紡ぐ。
「ははは。ありがとう。それなら安心だよ。――うん。じゃあ話そう」
そして、花厳はまたひとつ桔流の髪を梳くと、記憶を思い起こすようにして語る。
「桔流君は覚えてるかな。――以前、君が、初めて家での食事に誘ってくれた時。――俺、“桔流君には恋人が居る”と思って、最初の返事をしたでしょう?」
花厳の言葉に、桔流ははたと眉を上げると、ひとつ瞬く。
「はい」
「あれ。なんでかって言うと、――実は、あの日の前日。桔流君と別の子がお店から出てくるのを見かけたのが原因でね」
「え?“別の子”?」
「そう」
花厳は、ゆっくりと頷く。
「――その子は酔い潰れちゃってたみたいなんだけど、――その時、その子に肩を貸してる桔流君が凄く楽しそうに見えてね。――俺は、そんな君を見た事が無かったから、ちょっと驚いてね。――それで、その子の事を凄く大切に思ってるんだなって感じたんだ。――で、その結果。――俺は、二人が恋人同士なんだと思ってしまった――というわけなんだけど」
そんな花厳の話に、桔流は言う。
「あの。その、酔い潰れてた奴ってもしかして、――前髪上げてる、茶髪の奴ですか?」
花厳はそれに、思い出すようにしながら頷く。
「あぁ。そうそう。――多分、カラカル族の子かな?」
すると、思い当たる節があるらしい桔流は、
「あぁ~……」
と、言った。
それにくすりと笑うと、花厳は続ける。
「――で、二人が恋人同士だと勘違いした俺はね、がっかりしたんだ。――落ち込んだ、みたいな感じかな」
「“落ち込んだ”?」
花厳は、苦笑しながら頷く。
「そう。――“あぁ。俺に、桔流君と付き合える可能性ないんだ”――ってね」
その花厳の言葉に、桔流はハッとしたように花厳を見る。
花厳はそれにひとつ笑み、応じるように瞬いた。




