Drop.012『 WhiteCuracao〈Ⅰ〉』【1】
初めて迎えたにしては、濃厚すぎるほどの一夜を明かして以降。
桔流と花厳の食事会の頻度は、これといって増えるという事はなかった。
しかし、そんな食事会には、度々と濃厚な夜が付いて回るようになった。
そして、初めこそ、食後にベッドにもつれこむのは、毎度の食事会のうち、数回に一度ほどであったが、北風が強まるにつれ、その間隔も徐々に短くなっていった。
何せ、桔流と花厳は、“夜の相性”が良かった。
さらに、桔流には、理性を失った花厳に出逢いたいという野望もあった。
その上、花厳には、ベッドでしか見られない――、自身に酷く甘える桔流を愛でられる、という特別感があった。
そのような事から、二人の濃厚な夜が日に日に増えてゆく事は、必然とも云えた。
― Drop.012『 WhiteCuracao〈Ⅰ〉』―
「――桔流君。痛いのは嫌って言ってたけど、焦らされたり、追い立てられるのは好きそうだよね」
「え」
いつもより早い時刻からベッドにもつれこんだその日。
朝焼けが輝く前に互いの熱が落ち着いた二人は、眠りにつくまでのゆったりとした時間の中、雑談を楽しみながら余熱を冷ましていた。
その中、花厳がふと思い言うと、桔流は、咄嗟の一音のみを発するなり黙した。
そして、少し考えると、言った。
「――どうなんでしょう……。――云うほど、そういう感じでされた事ないから分からないですけど……」
(多分……、花厳さんにされたら……ハマるかもしれない……)
すると、なかなかの質問をしておきながら、花厳は爽やかに笑った。
「あはは。そうか。――じゃあ、未知数だね」
(これは……)
「そう、ですね」
(――してみたいんだな)
花厳がこのような質問をしたのは、純粋に、桔流が好きそうだと感じたからではあるだろう。
だが、恐らく、花厳の中にあるのは“それ”だけではない。
(花厳さんは、多分。俺がソレを好きか、より、――ソレをしたら俺がどうなるか、が見たいんだろうな……)
桔流は、そんな仮説を立てると、事後特有の色香を纏う花厳を見やった。
「ん?」
その視線に気付くと、花厳は首を傾げ、優しく微笑んだ。
桔流はそれに、
「いえ……」
と言うと、その身をくてりと横たえたまま、花厳を見上げ、ゆるりと笑む。
「花厳さんとこうしてると、画面の中に入ってドラマ観てるみたいだなぁって思って」
「えぇ?」
花厳は、それに、困惑したような素振りを見せる。
桔流からすれば、花厳は、普段から、ドラマに登場するような“現実離れしたイイ男”を演じ続けているように見えていた。
だが、そう見えているのは、決して、普段の花厳が、“イイ男を演じているように見えるから”――ではない。
花厳は、何よりも、顔が整っている上に、仕草まで整っている。
それゆえに、例え、花厳が一切の意識をせずに過ごしていても、桔流には、そのすべての動作が、現実離れした“ドラマの中のイイ男の仕草”に見えてしまうのだった。
「流石にそれは言い過ぎだよ」
だが、本当に普段から特に意識などはしていないらしい花厳は、桔流がそのような事を言う度、常、戸惑うようにした。
桔流は、その“イイ男”が、そんな、イイ男らしからぬ反応を見せる瞬間も、大いに楽しんでいた。
だからこそ桔流は、花厳が反応に困るような褒め言葉を敢えて口にする事も多かった。




