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恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ Stir ◆

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Drop.010『 Stir〈Ⅲ〉』【2】

 花厳は、自分に暗示をかけるようにして、続けた。

「あぁ。そうだ。それと。――桔流君。君は美人さんなんだから。そういう可愛い誘い文句も、あまり気軽に言わない方がいいよ」

 そして、相変わらず黙したままの桔流に、

「――さ。じゃあ、ベッドまで案内するよ。――肩を貸すから、おいで」

 と、花厳が言うと、桔流は、

「……はい。ありがとうございます」

 と、素直に頷き、花厳の肩を借りて立ち上がった。

 肩を貸して立ち上がると、桔流の体温が、今まで以上にはっきりと感じられた。

 桔流と出会ってから、最も近い距離で桔流の存在を感じる事となった花厳は、己の欲心が甘く囁くのを感じた。

 しかし、そんな甘い囁きも理性で払いのけながら、花厳は、桔流を寝室まで連れてゆく。

 そして、寝室に到着すると、桔流を自身のベッドの淵に座らせた。

 桔流はそこで、改めて礼を言う。

「ありがとうございます……。――でも、この服のままベッド使っちゃっていいんですか?」

 しばし時間が経った事で酔いが醒めてきたのか、桔流の口調は、未だゆるりとしていながらも、普段の調子に戻りつつあった。

 そんな桔流に微笑むと、花厳は言った。

「あぁ。大丈夫だよ。そういうの、あまり気にしないから。桔流君さえ問題なければ、そのまま休んで」

 すると、柔らかなシーツの感触を確かめるようにした桔流は、またひとつ礼を言った。

「すいません。ありがとうございます」

 花厳はそれに、

「いいえ」

 と、笑むと、次いで、

「――あぁ。そうだ」

 と言い、自身もベッドに片膝を付くようにして乗るなり、ベッドボードに置かれたスタンドライトに手を伸ばした。

 そして、スタンドライトを点け、好みの照明具合を尋ねようとしたところで、ふと動きを止めた。

 己の服が、何かにつんと引かれるのを感じたからだ。

 その感覚を不思議に思い、花厳がふと自身の腰元を見やると、白く美しい指が、花厳の服の裾を掴んでいるのが見えた。

 花厳は、それを一目してから、桔流を見た。

「……桔流君?」

 そんな桔流は、目を伏せ、幾本かの流線を描いたシーツに視線を落としている。

 状況が呑み込めず、花厳は、そのままの状態で、今一度桔流に尋ねる。

「……どうしたの?」

 すると、やんわりと暖色に照らされた流線を見つめたまま、桔流は言った。

「そういうトコで押さないから、逃がしちゃうんですよ。――花厳さん」

 その言葉に、花厳は黙す。

「――………………」

 そんな花厳をよそに、桔流は、つんと引いていた花厳の服の裾を、親指と人差し指で擦るようにしながら弄ぶと、続けた。

「――そうやって、相手のためばかりを考えて、本当の自分の気持ちは後回しにして、後回しにした事すら相手に伝えないまま我慢して、――ただただ、それを繰り返して――。――それじゃあ相手は、花厳さんの気持ちなんて一生分からないし、気遣いをしてもらった事すら、一生知らないまま過ごす事になっちゃうんですよ。――もしかしたら相手は、その時。――花厳さんと同じような気持ちで居るかもしれないのに……」

 桔流は、そこでひとつ区切ると、ようやっと顔を上げた。

 次いで、花厳と視線を交えるなり、さらに紡ぐ。

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