表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ Stir ◆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/61

Drop.008『 Stir〈Ⅰ〉』【4】

「――……あの、花厳さん」

「ん?」

 不意に名を呼ばれ、ニ杯目の珈琲を味わっていた花厳は、やんわりと首を傾げる。

 対する桔流は、そんな花厳ではなく、色とりどりの幸せが詰まっていた箱を見つめたまま、静かに言った。

「その……。――花厳さんがこうやって、俺に贈り物をするのは、俺の気を引くため……――なんですよね」

「――……」

(“俺の気を引くため”――か……)

 桔流の言葉に、花厳は目を細めて苦笑する。

(そういう事をさらっと言えてしまうあたり、やっぱり桔流君は、下心なく尽くされる機会が本当に少なかったんだろうな)

 桔流の口から、“自分を好きになってほしいから良くしてもらえている”というような言葉が紡がれる度、花厳はそう思っていた。

 ――こうしておけば付き合ってもらえるだろう。

 ――こうしていれば自分を好きになってくれるだろう。

 そんな――、自己中心的な欲望にまみれた下心から与えられる好意は、その者の思い通りの結果にならなかった場合、怒りや恨みに転じる事も珍しくはない。

 そして、最悪のパターンでは、そうした好意が怒りや恨みに転じた結果、こちら側が嫌がらせや心無い行いを被る羽目になる事もある。

(引く手数多の桔流君の事だ。――そういう“最悪のパターン”を経験した事もあっただろう)

 その事を考えれば、自身への好意的行動はすべて“自分の気を引くために行われているものだ”――と解釈してしまうようになるのも、必然と云える。

 しかし、花厳が桔流に贈り物をするのは、“桔流の気を引くため”ではない。

 花厳は、未だ空席が目立つ箱を見つめる桔流に、穏やかに言う。

「いや。――それはちょっと、違う、かな」

「“違う”?」

 意外そうにする桔流に、花厳は優しく微笑み、ゆっくりと紡ぐ。

「確かに俺は、桔流君に好きになってもらいたいっていう気持ちはあるよ。――でも、君に贈り物をするのは、“君の事が好きだから”してるだけ」

「“好きだから”……?」

「そう」

 その花厳の言葉を解そうと、ゆっくり復唱する桔流に、花厳は頷き、続ける。

「――たとえば、友人や家族とか、桔流君が大切に想っている人に贈り物をした時。――贈った相手が、その贈り物を喜んでくれたら、嬉しいでしょう?」

「はい。嬉しいです」

「うん」

 桔流が頷き言うと、花厳も笑顔で頷き、続けた。

「――つまり、それと一緒」

 そして、桔流と視線を交わらせると、花厳はさらに紡ぐ。

「――俺たちは、今。ちょっと特殊な時間を過ごしていて、俺が桔流君に片想いをしているからこそ、どうしても“気を引くため”って感じちゃうとは思うんだけどね。――でも、俺が君に贈り物をするのは、君の気を引きたいからでも、君に好きになってもらいたいからでもなく、――君の喜ぶ顔が見たいから、なんだ。――だから、俺は、贈った物を君が受け取ってくれたらそれで満足だし、それだけで十分嬉しいから。――君からの恩恵やお返しは、そもそも望んでないよ」

 桔流は、そんな花厳の想いに、ひとつ唸る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ