表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ Shaker ◆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/56

Drop.005『 Shaker〈Ⅲ〉』【5】

「ほら、帰ろうぜ」

 あの様子では、例え気付く事が出来る距離であっても、花厳が見ている事など、彼は気付きもしないだろう。

 案の定、酔い潰れた連れの青年に肩を貸しながら、呼びつけてあったらしいタクシーに乗り込んでいくまでの間に、酷く楽しげにする彼が花厳に気付く事はなかった。

 そして、そんな彼らを乗せたタクシーは、夜の街でひとつエンジンをふかすと、ゆっくりと発進した。

 花厳は、そのまま遠ざかってゆくタクシーをぼうっと眺め見送る。

 花厳は、その中。

 昨日、自分に向けられていた彼の笑顔を思い出していた。

(あぁ……)

 思い出した彼の笑顔は、それから脳裏に張り付いて離れなくなった。

(あぁ。そうか……)

 花厳は気付いた。

(また、一歩遅かったな。俺は……)

 そして、苦笑する。

(桔流君にはもう、恋人が居たんだな……)

 次いで、力なく笑い、小さく言った。

「今更気付いても遅いんだよ」

 そんな花厳の声は風に攫われ、賑やかな繁華街に呑まれていった。

 ✦

「おやおや。御影(みかげ)。――また潰れちゃったのかい?」

 地域でも名の知れた稲荷神社――〈白幸(しらゆき)稲荷神社〉に面した大きな平屋の玄関で、己の同居人とその友人を出迎えた白髪の男――月泉(つきいずみ)樹神(こだま)は苦笑した。

 純白の毛並が美しいホッキョクギツネ族の獣亜人(じゅうあじん)である樹神は、その稲荷神社の若い神主であった。

「う~……」

 そして、同居人の友人――桔流に肩を借り、何とか住まいに辿り着き、玄関で呻いているのは、この稲荷神社で神主の手伝いをしているカラカル族の青年――(なぎ)御影である。

 そんな御影に、桔流は呆れた様子で言った。

「――ったく。ちょっと目ぇ離すとすぐコレだ」

 愛おしげに御影を見やりつつ、樹神は穏やかに言った。

「ふふ。いつもすまないねぇ。桔流君。――御影を担いで疲れただろう。君も少し休んでいったらどうだい?」

 すると、桔流は歯を見せにかりと笑うと、言った。

「ありがとうございます。樹神さん。――でも、俺、明日また仕事なんで。――ささっと帰って寝ちゃおうと思います」

 そんな桔流に、

「おや。そうかい? ――じゃあ、手荷物が大丈夫なら」

 と、穏やかに言った樹神は、手渡すために用意していたらしい瓊本(にほん)酒を桔流に差し出した。

 桔流は、それを見るなり大いに喜んだ。

「えっ! いいんですか! ――これ、珍しいやつ」

「もちろん。――丁度二本頂いてね。いつもの御礼に受け取っておくれ」

「わぁ~、めっちゃ嬉しいです! ありがとうございます!」

 そして、満面の笑みを浮かべ、心から喜んでくれているらしい桔流に微笑むと、樹神は言った。

「それじゃあ、下まで見送ろう」

 すると、桔流は樹神を制し、すくと立ち上がった。

「あ、大丈夫です! タクシーに下で待ってもらってるんで! ――ってのと、俺より御影、なんとかしてやってください」

 またひとつ、少年のように笑んだ桔流に、樹神は苦笑しながら礼を言う。

「ふふ。すまないね。ありがとう。――帰り道、気を付けてね」

「はいっ!」

 そして、酔っているせいか、いつもより子供っぽい笑顔と共に一礼をした桔流は、玄関の扉を丁寧に閉めると、頂戴した瓊本酒を大事に抱えながら、ぴょんぴょんと神社の階段を下った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ