Drop.004『 Shaker〈Ⅱ〉』【4】
「あの、花厳さん。――俳優って事は、ドラマや映画とかにも出られてるんですか?」
その再びの追及に、花厳はギクリとしたような反応を示した。
しかし、どうあっても逃げられそうにないと判じたのか、今度は無駄な抵抗もなく、気恥ずかしそうにしながら花厳は答えた。
「あぁ、いやいや。――映像系にはそんなに出てないんだ。――どっちかっていうと舞台とか……、教える方が多いかな」
「えっ。講師とかもされてるんですか?」
予想を上回る回答に、桔流はより一層わくわくした。
そんな桔流に照れくさそうにしながら、花厳は続ける。
「うん。――というか、教える方が本職なんだ。――だから、舞台の方は本職の合間に、って感じだね」
「そうだったんですか……」
桔流は、いわゆる――“俳優の道の険しさ”というものを素人ながらに感じていた。
また、その上で、桔流自身は俳優向きではないとも自覚していた。
そのような事もあり、その険しい道を歩んでいる花厳に、桔流は素直な尊敬の念を込めて言った。
「――俳優で、教える側まで勤められるなんて、花厳さんこそ凄いですね……」
すると、花厳は、
「ははは。俺が教えられる事なんて大した事ではないんだけどね。――でも、ありがとう」
と、また照れくさそうに笑った。
そんな花厳に満足そうに微笑み返すと、桔流はその後も、己の好奇心に任せ、花厳の俳優業に関する調査を続けた。
すると、その中、花厳はアクション部門で特に活躍している俳優らしい――という新事実も判明した。
それゆえか、花厳には、アクション演出を含む役どころや作品のオファーがよく来るらしい。
また、総合的な演技指導に加え、アクション関連の技術指導も多く行っているのだそうだ。
(なるほど。――体格がイイ理由はそこにもあったか……)
桔流は、その花厳の話を聞く中、食事を進める花厳の腕をちらと見やる。
その日の気候はまだ穏やかで、花厳も七分袖ほどの装いをしていた。
そのため、ちらと見ただけでも、花厳の腕周りの男らしさは嫌でも感じ取れた。
つまり、花厳がそのような立派な体つきをしているのには、彼の職業のほか、彼の得意分野にもその理由があったという事だ。
(まぁ……このルックスに加えてこのガタイなら、男優業でも全然喰っていけただろうけど……)
そして、散々と聴取を重ねた桔流が、そんな事を考えながら情報狩りに満足し始めた頃。
食後のコーヒーを楽しんでいた花厳が、ふと思い出したようにして言った。
「あぁ、そうだ。桔流君」
不躾な思考を巡らせていた桔流は、その声にハッとして応じる。
「あ、はいっ。――なんでしょうっ」
そんな桔流に、花厳は少し申し訳なさそうにしながら言った。
「改めてだけど。――この間の忘れ物の件。桔流君や法雨さんたちにも随分と迷惑をかけてしまったよね。――本当に申し訳ない」
そして、言い終えるなり花厳は、頭を下げた。
「改めてだけど。――この間の忘れ物の件。桔流君や法雨さんたちにも随分と迷惑をかけてしまったよね。――本当に申し訳ない」
「あぁ、いえいえ! その、こちらこそ融通がきかず、申し訳ありません……」
すると、花厳は、
「いやいや。とんでもない」
と、頭を下げ返してきた桔流を制し、さらに続けた。




