表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋に不器用なケモミミBL♂溺愛イケ甘ダリ黒豹×恋愛難美人バーテン雪豹『ロドンのキセキ◆瑠璃のケエス◆輝石ノ箱ヨリ◆芽吹』連載中  作者: 偲 醇壱
◆ Shaker ◆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/56

Drop.003『 Shaker〈Ⅰ〉』【5】

「あっ、も、もちろんです! 大切な物だと思いましたので」

 すると、花厳は、それにひとつ苦笑し、

「そうか」

 と言うと、次いで酷く申し訳なさそうにしながら続けた。

「なんだか、俺の我儘で迷惑をかけてしまって申し訳ないんだけど。――もしできたら、あの忘れ物、改めて受け取らせてもらってもいいかな」

「――は、はいっ! もちろんです!」

 そんな花厳の申し出に、桔流はさらに心が弾むような気持ちになった。

 とはいえ、花厳の前という事もあり、取り乱さぬよう気をつけつつ、桔流は、

「では、こちらの椅子にお座りになってお待ちください」

 と、カウンター席を示しては一礼し、足早に事務所へと向かった。

 そして、法雨とのやりとりを経て“瑠璃色”を受け取ると、再びフロアに戻り、その足で花厳のもとへと向かった。

 そんな桔流から“瑠璃色”が丁寧に手渡されると、花厳は、

「ありがとう」

 と言った。

 そんな花厳は、苦笑こそしていたものの、どちらかといえば気恥ずかしいといった笑みを浮かべていた。

 その笑顔には、苦しみや悲しみは潜んでいないようにも見えた。

 そのような花厳の様子に、桔流は変わらず高揚する心を抑えながら密かに思った。

(もしかしたら……――)

 もしかしたら花厳は、何かの巡り合わせから、改めてこの贈り物を渡せる事になったのではないか。

 そして、今夜こそ花厳は、大切な人との幸せな未来を、その手に出来るのではないか。

(そうだとしたら……)

 もしそうであるならば、自分もとても嬉しく、この贈り物を安心して返せるという事も、本当に嬉しい。

(中身が指輪だったのかどうか。――それは、結局分からないままだけど)

 この瑠璃色の贈り物が、持ち主のもとに帰って、更には届けられるべき場所に届くのならば何よりである。

(――でも……この人は……、――本当は何も解決してなくて、苦しいままだったとしても、こうして笑うんだろうな……)

 花厳は、何か苦しい事があっても、相手のために無理をして笑うタイプでもあるだろうと、桔流は感じていた。

 だからこそ、心から喜びたい反面、思ってしまうのだ。

(本当は、無理をしているんだとしたら……)

 常連客となり、店のスタッフたちとも随分と親しくなったこの男は、もう、――この店のスタッフたちにも、苦しんでいる所は見せないだろう。

 そうであれば、今回の花厳の申し出は、自分のためでなく、スタッフや店のためだったのかもしれない。

 つまり、店に迷惑をかけているからと、辛い気持ちがありながらも、この忘れ物を受け取ったのだとしたら――。

(――……って、余計な事考えすぎか)

 無事に“瑠璃色”を手渡した後。

 花厳の見送りとして店の前まで出た桔流は、悶々とした思考を巡らせながらも、花厳との短い会話を交わし、一礼した。

 そして、変わらぬ笑顔で礼を告げ、街中へ消えてゆく花厳の背を見送りながら思う。

(――いや。――どっちにしてもこれで良かったんだ。――人は、悲しい事、嬉しい事をどっちも経験して、色んな壁にぶつかって悩んで、それを乗り越えながら生きていくもんなんだ。――だから、あの贈り物もきっと……これで良かったんだ……)

 すっかりと街中に融け込み消えた花厳を想いながら、ふと空を見上げた桔流は、(きら)めく光達に、花厳の幸運を託した。

 

 

 

 

 

Next → Drop.004『 Shaker〈Ⅱ〉』

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ