ドッグランに放された犬の気持ち
車から降りると──
なに、ここ!? 楽しそう!
ひろーい! 野原がめっちゃ広がってる!
ご主人! 早く行こう! あそこへ行こう!
ぼく、思わず笑顔になって、リードをくわえて引っ張るの
リードをはずされて
ぼくが自由に駆け出すと──
あはは
あはははっ!
ご主人も笑ってる
だからぼく、嬉しい
あっ、ちょうちょ
ちょうちょ! ちょうちょ!
ぼくジャンプしちゃうよ
お空まで届きそうだよ
ねー、ご主人! 早く……
はっ?
ご主人、どこ?
ご主人! どこどこ!?
自慢の鼻で──
えええっ!?
匂いはするのに姿がないよ!?
だだっ広い草原に風が吹いて
ぼく、この世にひとりぼっちになったみたい
ご主人! ご主人ーっ!
どこどこどこどこ!?
はっ! はっ! はっ! 息が荒くなっちゃうよ!
そのうち息がとまっちゃう……
このままお別れなんて絶対いやだよーーー!
「ふふ……。コロ!」
声がした!
声だ! ご主人の声! ここみちゃんの声!
あっちだ! あっちから聞こえた! ぼく、耳もいいんだから!
見ーつけた!
木の陰なんかにどうしているの?
迷っちゃったの?
そういう時は、ぼくに任せてよ
ぼく、ひとりになってもここからお家までちゃんと帰れるんだから
ほんとうなんだからね!
でもよかった
よかった
よかったよかったよかった!
一緒だよ
いつまでも
ひとりぼっちになんかしないでね
だだっ広い草原も駆け回りたいけど
それよりもご主人といるのがいいんだから
ずっと一緒だよ!