後日談1:悪役令嬢(リリア):メス猫
今日は三人でのお出かけで、広場で行われているバザーイベントを見に来た。王都の中と外に限らずやってきた様々な人が商品を持ち寄って広げている。定番の商品から、あまり見ないような品まで並んでおり、混沌としているが面白い光景ではある。
ウルスは幾つか、使えるんだか使えないんだか微妙そうなキッチンの便利グッズを買っていた。まぁウルスの腕前なら、よほどのハズレ商品ではない限りどうにか活用するだろう。
「あそこの品が気になります!」
リエルが興味を持った場所に行くと、売っていたのは……コスプレ用の服だった。しかも、エッチする目的の品。売り手が作成者で、全部新品ではあった。
ほんとに、この子は……。
とはいえ、私も興味は無くもない。
「せっかくだから、お互いにどの衣装を選ぶのか秘密で買いましょうか。着た時にお披露目する感じで」
「面白そうですね! そうしましょう」
バザーでの買い物デートが終わり、夜が訪れた。
私は今度にするが、リエルは早速コスプレ衣装を着る意思を見せた。
楽しみにしながら見ないようにして着替え終えるのを待った。
「お待たせしました」
目を向けると、リエルが恥ずかしそうに猫をイメージした下着を着ていた。頭には猫耳がつけてあり、手には肉球付きの手袋をはめている。
「リエルにゃんこですにゃあ!」
照れからか頬を赤らめながらも、ノリノリでポーズを決めて手招きする。
「にゃー、リリア様……大好きにゃん」
その瞬間、リエルの可愛さに心を奪われた。思わずリエルを抱きしめ、頬擦りをした。
「なんて可愛いの……!」
私はリエルの頭や顎を優しく撫でた。リエルはされるがままに嬉しそうに、うにゃうにゃと鳴く。その姿が愛おしくてたまらなかった。
しばらく私にされるがままだったが、リエルが体を離してコスプレ衣装が入っていた紙袋から何かを取り出した。
「リリア様の手でつけて欲しいにゃ」
手渡しされたのは、小さな鈴がついた革製の首輪。
受け取ったとき、私の口角が上がったのが自分でも分かる。
「じっとして」
細い首にゆっくりと首輪をつけた。倒錯的な行為にゾクゾクとするものがある。
「これで完全に私の飼い猫ね」
「にゃう」
リエルは確かめるように指で鈴を突いてチリンチリンと鳴らす。その表情には喜びが溢れていた。
「リエル、もっと近くに来て」
呼びかけて、私はリエルをベッドに連れ込んだ。
リエルは顔を赤らめながらも、すぐに私の腕の中でリラックスした。
「ふにゃあ…リリア様……」
私の名前を呼ぶ声が甘く響く。その声に応えるように何度もキスをした。
唇が触れるたびに、リエルの体が小さく震えるのを感じた。
「大好きよ」
言葉と共に強く抱きしめる。リエルも私の背中に腕を回し、しっかりと抱きしめ返してきた。顔をすり寄せたり頬をペロペロと舐めてくるのがまた、子猫が甘えるようで可愛い。
「……リリア様にしつけて欲しいにゃん」
リエルが……私のメス猫が媚びた表情を見せる。
ウルウルと期待した青い瞳で見つめてくる。
「ええ、たっぷり可愛いがってあげる」
部屋の防音がしっかりしていて良かった。
一晩中、発情したメス猫の鳴き声が部屋に響いていたから。
──味を占めたのか、この日以降、たまーにリエルがメス猫の恰好で甘えてくるようになった。




