最終話:エピローグ
私とリエルが恋仲になってから時間が経ち……学園を卒業した。
卒業後は王都内に建てた屋敷で、私とリエルとウルスの三人で暮らしている。もちろん、私とリエルは結婚済み。
結婚したことでリエルの名前は『リエル・フォルティナ』に変わった。
アレンが仲人として名を挙げてくれたおかげで、実家は私と平民であるリエルとの結婚に反対ができなかった。権力に弱いのは貴族らしくて実に分かりやすい。
結婚式にはアレンとシロエも参列してくれたし、リエルが育った孤児院の人達にも参加してもらった。実家メンバーで唯一招待したお母様は来てくれたし、私は心から満足している。
卒業後の仕事だけど……私は仕事らしいことはあまりしていない。
エリクサーの不労所得は変わらず得られているし、ネイルサロンの社長としてはたまに本店や支店の様子を見に行くだけで、基本的にはスタッフや各店長に任せている。お金に余裕もあるため、魔石作成はやっていない。
じゃあ私が何かと言うと……画家だ。屋敷内にアトリエを作り、好きに絵を描いている。王都の展覧会にいくつか作品を出してみたら売り上げは良好で、高い評価も受けている。作品数が増えたら、個展も開く予定だ。
こんな風に楽しく絵を描けるのも、すべてリエルのおかげ。
リエルは魔法院で研究者として働いている。
私たちには莫大な資産があるので働かなくても暮らせるが、私に釣り合う人間でいたいという理由と、自分の働きが人々に役立つならばと一生懸命に勤めている。
リエルのそういう所も好きだ。
ウルスは相変わらずなので言うことがない。しいて言うなら、リエルが私の恋人になって以降はリエルを『嬢ちゃん』と呼ぶようになったことくらいだろうか。
ちなみに、私たちの稼いだ資産の使い道として国内のすべての孤児院に寄付をしている。寄付額は、孤児院がある土地の領主に話を通して許可された範囲に抑えている。過剰な寄付金は孤児院側にも不要な問題が起きてしまうので、当然の配慮だ。
寄付金が横領されることが無いように、監査員も別口で雇っているので抜かりはない。
あと月日が経ったことで、私たちの見た目も成長……していない。なにも変化が無い。
というのもターマインの事件があって以降は、気付かない内に魔の遺物に触れたり何かしらの悪影響を防ぐために毎日一食はエリクサーを混ぜた料理をウルスに作ってもらうことが習慣となった。
神話級のアイテムを日々摂取したことに加えて、高いステータスが作用し、私たちは存在が神か神人か天使か何かそういう段階の上位体に成長した。
結果、不老に加えて自分の意志で自己再生もできて病気にもならない身体を私たちは手に入れた。
以前のリエルは私やウルスと違ってステータスは低かったが、ターマインの事件からは自衛のためにも私とウルスで鍛えあげたので、今のリエルのステータスは私と同じレベルに至っている。
上位体になった影響でステータス上限も突破したらしく、私たちはより強く成長できた。その気があれば、今の私とリエルは魔法一発で国を消せる程だ。
私たちは不死ではないが、前世のアニメなどのコンテンツの知識的に不老不死は存在が負けフラグな感覚あるので、不老がちょうどいい。死後の世界でもみんなで一緒に過ごせばいい。
まぁいざとなったら膨大な魔力で次元を割いて、みんなで別世界に行くが。
これでもう、破滅フラグや不幸フラグが立つことはない。仮にそんなフラグが立っても全て粉砕する。
◆ ◆ ◆
休日の昼、私たちは山の広場に来ていた。天気は澄み渡るように晴れやかで、風は爽やかで心地よい空気が肌を撫でる。
……もし前世の最期みたいに急な雨雲がやってきたとしても、魔法で吹き飛ばすから今日の晴れは確定事項だ。
まずは三人で、ウルスが手作りした昼食を囲み、ピクニック気分で穏やかなひとときを過ごした。
食後、ウルスは草の上に寝転び、リラックスした様子で空を見上げている。
私はキャンバスを広げ、その前に腰をおろした。隣にはリエルが静かに座り、私を見守ってくれている。
前世の時と違って、一人ではない。大切な人たちがそばにいる。
「今日はいい日ね」
これから、前世での最期の嫌な思い出を完全に塗り替える。
同じ作品を描くわけではないが……あの日に描き切れなかった作品を供養するためであり、悔いを残さないためでもある。
筆を取り、筆先がキャンバスに触れたその瞬間から、時間がゆっくりと流れ始めた。
手が動く度に、筆先が静かな音を立てて色を広げていく。
絵を描いていると、自然と感慨深い気持ちが湧き上がってくる。あの時よりも、ずっと楽しくて、幸せな気持ちになれているのが分かる。
理由はもちろん、愛する人がいてくれるから。私にとって一番の光であるリエルがいてくれるから。
筆を止め、リエルに目を向けた。
「ありがとう、リエル。あなたが見守ってくれているから、安心して描ける」
リエルは澄んだ青い瞳で私を見つめ、優しく微笑んでくれた。
何よりも代えがたい、私にとっての光だ。
「リリア様を不安になんてさせません。私がずっと、そばで支えます」
私はリエルに微笑み返して、軽くキスをしてから再び筆を動かす。
私たちの人生は、これからも続いていく。新しい楽しみが待っている。
未来は明るく、絵の具のように色とりどりに満ちている。
私は幸せ者だ。
ウルスに出会えて良かった。
リエルに出会えて良かった。
私は……この世界に生まれてきて本当に良かった。
fin
──というわけで、完結です!!
終わり方は爽やかめで、サラッと不老化と追加強化で安易な離別フラグをへし折ってます。
最後までフラグ折り悪役令嬢でした。
初めてのオリジナル作品でしたが、最後まで読んでくれた読者がいてくれて良かったです。
ブックマークや評価やリアクションや感想を書いてくれた方など、ありがとうございました!
自分の好きな要素や展開で出来上がった作品なので、楽しかったです。
もっと悪役令嬢と原作ヒロインでゴールする作品が増えて欲しいものですねぇ。
最後に、よければ完結したこの作品への評価や感想やレビューを貰えると作者である自分が喜びます!
受賞すると書籍化だかコミカライズだかあるらしい、なろう公募にも参加中ですし……評価などで、この作品をまだ読んでいない誰かがこの作品を見つけてくれるかもしれないので、よろしくお願いします。
補足:後日談を更新する場合の時系列は、時間を飛ばしているこの最終話より前の予定です。




