23話:ヒロイン(リエル):告白とキス
ターマインさんを倒した後、私は魔法で魔力が尽きた疲労感と眠気に襲われて意識を失った。
気がついたら王城に運ばれていたし、検査とか事情聴取とか今回の件に関する緘口令とか三日間の経過観察の指示とか色々あって、リリア様と話せる時間が取れないまま一日が終わってしまった。
翌日、目を覚ました私は、慣れないベッドでぼんやりと天井を見つめていた。何もすることがなく、ただ時間が流れていくのを感じていた。その時、部屋の扉が開き、リリア様が静かに入ってきた。
リリア様と会えた嬉しさと同時に、自分がどれだけ迷惑をかけたのかを思い出し、気まずさがこみ上げてきた。そんな私を責めずに「もう平気?」と心配してくれて余計に申し訳なくなる。
「色々と迷惑かけてしまいました。ごめんなさい」
「あなたは利用されただけよ。気にしないで。それに私の方がリエルに謝らないといけないの。しかも、二つのことで」
逆にリリア様が私に謝ることってなんだろう。二つどころか一つも思い当たらない。
「まず一つ目、いなくなったあなたを見つけるために日記を勝手に読んだの。本当にごめんなさい」
そっか、リリア様が屋敷にこれたのは日記を読んだからなんだ。日記を読んだってことは……。
「バレちゃったんですね、私の気持ち」
日記には私の想いも含めて細かく記載している。リリア様に見られた時のことは考えてもみなかったから、それはもう赤裸々に。
「……ええ」
「いいんです。本当はどこかで知って欲しいと思っていました。私は気持ちを口にする勇気がないズルい人なんです」
舞踏会の夜、心の中でもっともらしい言い訳も本当はただの逃げだったことに気づいていた。本当は……言葉にできなかったのはフラれるのが怖かっただけ。
「二つ目はあなたの気持ちも関わる話よ」
きっと……ううん、間違いなくフラれる。緊張が走る。
「私はリエルから可能性を奪っていたの」
話の流れが予想外の方向に向かった。単純に意味が分からない。
「どういう意味ですか?」
「実は──」
リリア様の口から語られた内容は不思議な話だった。リリア様には前世の記憶があって、この世界をテレビゲーム──イメージとしては遊べる絵本らしい──で知っていて、私は王子の誰かと結ばれる運命があったことやリリア様が酷い目に合う結末を変えたくて私に接触したこと等々。
「信じられないでしょうけど、全て本当の話。私はリエルが想っていたほど素敵な人間じゃない。ただの身勝手で、つまらなくて、悪い人。だから……リエルに好きになってもらう資格なんてない。嘘をついて、ごめんなさい」
信じないなんて選択肢は存在しない。その上で私の気持ちに変わりは……ちょっと変わったかも。もっと好きになれた。リリア様は自分だけ助かる道に行かないで、私に何度も手を差し伸べてくれた。リリア様の目的とは関係ない時でも、私に微笑んでくれた。
「リリア様」
語り終えたリリア様の雰囲気に恐れが混じっているように感じた。まるで私がどんな反応をするのか、予測できていないかのように。
「リリア様には色んな選択肢があったと思います。その中で、私の手を取ってくれて、私と日々を過ごしてくれて、私の青い瞳を綺麗だと言ってくれました。私はリリア様に数え切れないほどの幸せをもらいました」
もう躊躇したり、迷ったりしない。
「私は心から感謝しています。後ろめたいなんて思わないでください。それに、今の話を聞いても私の気持ちは変わりません。私の気持ちは、間違いなく私の意思です。リリア様を心からお慕いしています」
一番伝えたい気持ち。胸の奥に秘め続けてきた気持ちを、ようやく口にした。
「私はリリア様が好きです。誰よりも愛しています」
リリア様は目を瞬きさせながら、口元に小さな笑みを浮かべた。
表情から憂いが消えて、私は少しほっとした。
「私も、リエルが……好き。目的があって、あなたに近づいたけれど、一緒に生活をしていく中で私の心はあなたに惹かれていったの。今はどうしようもなく、リエルのことが好きよ」
???
うん?
リリア様が私を好き?
なにか聞き間違えたかな。
あっ、いや、そっか。私の好きとは別の友愛の好きって意味か。そうだよね。
「……ありがとうございます。私の好きとは違う、友達としての好きでしたが今の言葉はすごく嬉しいです」
私の想いを正面から受け止めてくれた上で、そう言ってもらえただけで私は──
「同じ意味よ。私は恋愛的な意味でリエルを愛しているわ」
???
うん……うーん?
リリア様が私を愛している?
そんな都合の良い展開ある?
夢か幻とか? 実はまだ屋敷に捕まっていて幻覚を見てたりしない?
思考していたら、冷たい感触が私を現実に引き戻した。
手が私の顔に触れていて、いつの間にかリリア様の顔が目の前にある。
「えっ、あっあの」
もっと近くなってきた。
わぁ、まつげが長くて綺麗で──
私の唇にリリア様の唇が触れた。
「んむぅ!?」
瞬間、頭の中が真っ白になった。
キスされている。リリア様とキスしている!?
夢みたいだけど夢じゃなくて、ええっと、うん。
ぁぁぁ、唇が柔らかくて、うへへ。気持ちいい。
キスって、すごい!
頭の中がわちゃわちゃしながら唇を動かすのに必死になっていると、リリア様が顔を離した。
「私の気持ちと意味、わかった?」
「わか………」
わかったら終わり?
キスしてもらえない?
「りません。もうちょっとしたら、わかるような……」
リリア様が微笑む。いつもより色っぽくて、心が強く掴まれる。
「欲張り」
二度目のキスは、一度目よりも激しい。舌が入って来て、互いの唇から吐息が漏れ出るようなキス。なんだかキスされているというより食べられているようにも感じる。
すごく幸せ。ずっとこうしていたい。もっと欲しい。リリア様が、もっともっと欲しい!
リリア様と密着する。正面から、おっぱいの柔らかさが伝わってくる。キスしながら身体が触れて堪能して、興奮が止まることを知らない。
あっ、キスだけで、ぅぅ、もうムリっ!
内から来る衝動に耐えきれなくて、リリア様をギュッと抱きしめながら身体を震わせた。
ゆっくりと顔を離す。リリア様は余裕そうなのに対して、私はさっきの余韻が強くて荒い呼吸を繰り返す。
「もしかしてキスだけで」
「い、いわないでください……」
密着状態でのキスだけで果ててしまったのが恥ずかしい。でも、仕方ないよね。リリア様と密着ちゅーしたんだもん。
リリア様は私をジッと見た後、両手で自分の胸を持ち上げて見せてきた。おっぱいの大きさが強調されて、視線が吸い込まれる。
「キスの先、したい?」
「したいです!!」
したい。絶対したい。今すぐしたい。ちゅーもえっちもいっぱいしたい。
「ここではダメ。学園に戻ったら……ね」
リリア様の妖艶な笑みが私に効く。言葉も出せなくて何度も頷いた。
帰ったらリリア様とえっちできる。
うぅ……考えるだけで涎が出そう。出た。垂れた涎を舐め取られてキスが再開された。キスの先はお預けの代わりに、今日の検査の時間まで何度も唇をむさぼり合った。
因みに、検査前に下着は替えましたね。ハイ。
なんだか……ターマインさんと会った日から色々あったけど、リリア様と両想いの恋人になれたし、私は幸福です!
やったー!




