12話:ヒロイン(リエル):雷雨の夜に
ざぁざぁと雨が降り、雨雫が窓を叩きつける音が響く夜、私は机に向かって勉強をしていた。外の天気が激しさを増してきていた。遂には稲妻が夜空を切り裂くように光り、その後に続く雷鳴が部屋全体を揺るがす。
「リ…リエル……」
読書をしていたはずのリリア様の声がそばから聞こえた。私はすぐに顔を上げ、リリア様の方を見た。手が小刻みに震えており、顔にはこれまで一緒に過ごしてきた中で見たことがない……明らかな恐怖の色が浮かんでいた。
「リリア様、どうしましたか?」
いったい何があったのか、不思議になる。
「雷が…怖いの……。お願い、そばにいて……」
その言葉に、私の心が締め付けられた。リリア様の声は震えており、一度も聞き覚えのない弱々しさだった。ペンから手を離して、リリア様の手を優しく握った。
冷たい。リリア様は体温が低いのか、これまで触れた時も手はひんやりとしていた。でも、今はまるで氷で冷やしたかのように熱がない。思わず、握る手に力が入る。
「リリア様、大丈夫です。私がいますから」
リリア様の手をしっかりと掴みながら、ベッドへと誘導した。リリア様をベッドに座らせ、背中に手を回してそっと抱きしめた。
異様なほどに全身が冷たい。さっきまで部屋じゃなくて、外にいて大雨に全身を晒してきたのではないかと思えてしまう。それに怖がり方も……孤児院で雷を怖がっていた子供とも違うように見える。もっと、こう、なにか……根本的な部分に問題があるみたい。
リリア様も抱きしめ返してきて、腕の中で震えていた体が次第に落ち着いていくのを感じた。
雷鳴が再び響き、リリア様がビクリとした。私はしっかりと抱きしめ続け、銀髪を優しく撫でながら、心の中でリリア様が少しでも安心できるように祈った。
少しずつ、リリア様の体温が戻ってくる。
「リエル…ありがとう……」
リリア様は私の胸に顔をうずめて、涙声で感謝の言葉を呟いた。私は何も言わず、そばにずっといることにした。
私が初めての教室で悪意に晒されて孤独を感じた時、手を握って支えてくれたように。
私の温もりが、リリア様の心に安寧を与えることを願って。
……ところで、この状態って大胆なことしている気がする。やましい気持ちは無い。誤魔化しじゃなくて本当に無いよ。相手を想った行動の結果だしね。
その上で、抱きしめ合っている状況には緊張する。私だって人間だし、乙女だし。
お互い、身にまとっているのが薄着のネグリジェだから、あの…うん……ね?
心臓の音がいつもより早くなっているのが、自分でも分かる。
リリア様にはバレてないよね……?
リリア様の手が冷たいのは、前話の通り冷えた状態で亡くなった後遺症です。
リエルが真っ当に主人公らしいムーヴして、本心から相手を思いやっている……のに微妙に恰好つかない。仕方がない子です。
この作品は公募に参加しています。受賞したらコミカライズだかなんだかあるとかないとか…。
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次回、新しい攻略キャラクターが登場します。




