10話:ヒロイン(リエル):専属メイドと二人きり
制服デートから少し経ったある日、リリア様はアレン様に呼び出されて部屋を空けることになった。その間、リリア様の専属メイドのウルスさんとお茶会をすることになった。ウルスさんは狼みたいな金色の瞳と長い赤髪が特徴的な女性だ。ウルスさんはいつもリリア様のことを「お嬢」と呼んでいる。
ウルスさんが手際よく紅茶を淹れてくれた。カップから立ち上る湯気とともに、狼みたいに鋭い瞳が私を見つめる。
「お嬢はお前とつるんでいると楽しそうだ」
突然の言葉に、私は驚きつつも嬉しくなった。私はリリア様と過ごしている毎日が楽しい。私だけじゃなくて、リリア様も一緒にいることで楽しんでくれているなんて喜ばしい。自然と笑みがこぼれた。
「それを聞けてすごく嬉しいです」
ウルスさんは私の反応を見て、ハンッと少しだけ笑う。しかし、その後すぐに真剣な表情に戻り、私に釘を刺すように言った。
「お嬢に嫌な思いはさせんなよ。お嬢のことを大切にしろ」
ウルスさんの言葉には、リリア様への忠誠心……というよりは愛情が感じられた。私はその重みをしっかりと受け止め、真剣に頷いた。
「はい、ウルスさん。リリア様のことも、リリア様との繋がりも大切にします」
ウルスさんは私の返事に満足したのか、再び紅茶を飲んでニヤリとする。
「言ったな? お嬢が選んだ相手だからな、信じておくぜ」
私は胸の中に温かいものが広がるのを感じた。リリア様の専属メイドであるウルスさんに認められることは、私にとって大きな意味があった。少し気を緩めながら、私は紅茶のカップを手に取って飲み始める。
しかし、次のウルスの言葉が思いもよらない方向に進んだ。
「あと……お前、お嬢をエロい目で見すぎだろ」
飲んでいた紅茶を思わず吹き出す。
「な、なななんで……!」
カップを持つ手が震え、顔が熱くなる。
慌てふためく私に、ウルスさんは冷静に続けた。
「なんでもなにも、お前くらいムネやケツをガン見してたら誰だって丸わかりだろ」
私はさらに恥ずかしくなり、顔を両手で覆った。思い返してみれば、確かにリリア様の美しい姿に目を奪われることが多かったが、それがバレバレだったなんて。
「そんなつもりじゃ……」
どうにか弁解しようとする私に、ウルスさんは面白そうに笑みを浮かべた。
「お嬢にはバレてないから安心しろ。お嬢って、自分のことは微妙に鈍いからな」
「よっ、よかったぁ……」
安心感から脱力する。
「せいぜい、お嬢にはバレないようにするんだな」
「…………ハイ」
見ません、とは言えなかった。どうしたって、今後も絶対に見てしまうから。
「ウルスさんは、私みたいな目でリリア様を見ないんですか?」
「ねぇな、美人だとは思うけどよ。つーか、誰かに対して性欲が湧いたことまだねぇし。アタシはうまいもん喰って食欲さえ満たせればいい」
ブレないなぁこの人。
「前から思っていたんですが、リリア様とウルスさんって他の生徒とその専属メイドとは関係性が違う気がします。どんな出会い方したんですか?」
「聞いても爆笑ポイントねーぞ」
「笑いは求めてないです……」
「そんじゃ、知りたいなら聞かせてやるよ」
ウルスさんは、自分の生い立ちとリリア様と出会った時の話を始めた。
次回はウルスの過去語りです。
ウルスは、リエルとリリア様の仲は過干渉まではしないけど肯定的です。
ウルス「お嬢が良い感じの相手と幸せになったら、もっと飯がウマいんだろうけどな~」チラッ
みたいな感覚。