表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/48

7話:悪役令嬢(リリア):お茶会でゆったり

 入学して初めての週末。授業もなく、私は学園の中庭でリエルとウルスと共にお茶会を楽しんでいた。今の時期、原作の時系列では大きなイベントもなく、リエルの成績をカバーすること以外に考えるべきこともない。のんびりと過ごせる時間は多い。


 私とリエルが同じテーブルで、ウルスは隣のテーブル。

 私たちのテーブルには程々の量のお菓子とツヤのあるカップに淹れられた紅茶。

 ウルスのテーブルには机の上の面積ギリギリに配置されている山盛りのお菓子と、大きめのグラスにたっぷり淹れられた果実ジュース。

 ウルスは私が拾うまでは満足に食べれていなかった反動か、食事の量がいつも多い。幸せそうに食べているし特に言うこともない。


 お菓子は全てウルスが作った物だ。ウルスはメイドとして……というよりは自分の食欲を満たすために勉強して今では様々な料理を作れる。この学園は生徒や関係者であれば食堂は無料だし食材も好きに使えるので、今日のお菓子も遠慮無しに作り放題していた。


 ウルス特製のフルーツ比率が高い欲張りケーキを味わいつつ、リエルと雑談する。


「リエルは卒業したらどうするの?」

「王都にある魔法院で働く予定です。そこで魔石を作成したり研究のお手伝いですね。そのために魔術協会から学園に入れられたので」

「そう。光属性のリエルならどちらでも重宝されるでしょうね」


 学園を卒業すれば自分の魔力で自由に魔石を作成する資格を貰える。

 魔石は魔道具を動かすのに必要不可欠な存在。魔道具はインフラとして貴族も平民も活用している。キッチンや風呂などには火属性と水属性の魔石が使われているし、照明には雷属性の魔石が使われている。要は属性別の電池だ。


 魔石の入手方法にはいくつかの手段がある。まず、魔力の高い土地で採取や採掘を行う方法。次に、魔物を討伐して得る方法。そして最後に、魔力を用いて魔石を作成する方法がある。


 魔石の需要は衰えることなく、今後ますます増していく。言い換えれば、魔石は常に価値があり、金銭になる。そのため、魔石の作成には厳しい制限が設けられており、学園を卒業すれば自由に魔石を作成できる貴族は力と富がある。


 ただし、魔石は自分の属性の物しか作成できない。光属性の魔石は、魔物除けの魔道具や雷の魔石を使う物よりも高価な照明の魔道具やカメラの魔道具などに使われているが、作成ができる適性者が滅多にいない。原作の説明と例外的に学園に入学を許可されていることを考えると、この国では光属性の適性者はリエルしかいない。

 魔法院では、魔法だけでなく魔石の属性を変える方法や適性以外の魔石を作る方法なども研究されているらしい。魔石の供給面や研究データとして貴重なリエルは魔法院で酷い扱いはされないはず。


「リリア様は卒業後はどうするんですか? やっぱり領地に戻って統治でしょうか」

「領地には戻らないわ。結婚したお姉様が新たな領主になるし、子供も生まれたから予備の私が戻る必要もないしね」

「予備?」


 私はお姉様の予備として扱われて、家族としての時間がなかったことを簡潔に話した。


「なんだか悲しい話です」


 リエルは私の話を聞いて、少し心配そうに眉をひそめた。リエルはそっとカップを口元に運びながら、青い瞳でじっと私の顔を見つめていた。その表情に、リエルの優しさが滲んでいるのがわかる。


「そうかもね。だけど、お陰で私がやりたいように行動できたから今は良かったと思うわ。あと卒業後の計画というか……やりたいことは探し中よ」

「早く見つかるといいですね。私にできることがあればお手伝いします」

「フフッ、ありがとう」


 私のやりたいこと。


 頭に浮かんだのは、真っ白なキャンバス。


 すぐに脳裏からそれを消す。どうせ……今の私はなにも描けない。



「ウルスさんのケーキは本当に最高ですね。いくらでも食べれちゃいそうです」


 リエルが話を切り替えると、私も自然に笑顔になった。


「ウルスの腕前にはいつも感心させられるわ。ウルスの料理はどんなに疲れていても心が癒されるの」


 ウルスはちょっと照れくさそうに笑いながら、お菓子を口に放り込んでいた。私もケーキを食べると、フルーツが口の中で溶け合って幸せな気持ちにしてくれる。


「リエル、あなたの好きなお菓子は何かしら?」


 リエルは少し申し訳なさそうに目を伏せ、静かに答えた。


「お菓子を食べる機会があまりなくて……どれが好きでどれが嫌いか、よくわからないんです」


 私はリエルの心を軽くするために、穏やかに微笑みかけた。


「それなら私と一緒に色んなお菓子を食べて、リエルの好きなお菓子を見つけましょう」


 リエルは私の提案にほんのりと頬を染め、少し照れたように笑った。


「それは楽しそうですね。ぜひ、リリア様といろいろな種類のお菓子を試してみたいです」


 リエルの嬉しそうな表情を見ると、私もつられて嬉しくなる。心温まる時間が今後もあることが少し楽しみになった。

この作品ですが読み返す際には、普通に読み返してもいいですが、それぞれの視点だけを連続で読むのも印象が変わるのでオススメです。


リリア様の視点だけ連続で読むと、サクサク進む感が強いです。

リエルの視点だけ連続で読むと、自分に都合が良い美人が現れた感が強いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ