メッセ③
入院してから一週間が経ったある日。
高田はなるべく早く仕事を切り上げてお見舞いに行こうと考えていた。
そうでもしないといつどうなるか分からない和葉の身体が心配だったから。
コンコン。
「はい。」
はいの返事に元気が無いのが分かった。
「和葉。お前元気ねーじゃん。どうした?」
「…そんなことないよ?」
「またそんな嘘ついて。」
「何で?」
「声に元気が無いのはそれだけ体力にも元気が無いってことだから。」
「元気だよ。」
「無理すんな。あの医者からあー言われてショックだったんだろ?」
「…!!」
高田はこないだ医者に言われた事をずっと考えていた。
『和葉さんは…余命1年…と少し…と言うところでしょう。』
『へ?』
『なのでこれから長いか短いかの闘病生活となりますが、一緒に頑張っていきましょう。』
『余命1年…と少しって…??』
『2、3カ月が峠だと思って下さい。』
『そんな…』
『でももし和葉さんの生命力が強かったらもっと長く生きられるかもしれません。』
『本当ですか?』
『えぇ。ですがこれは和葉さんの生命力に関わってきます。』
『はい。』
『色々薬で試したりもします。それによっては副作用も出てくる可能性は高いと思って下さい。』
『先生。』
『はい?』
『色々宜しくお願いいたします。』
こんなやりとりが続いたあの日から和葉の顔色だけは悪くなる一方で。
身体は悪くなってる筈なのになんだか良くなっている気がしていただけだった。
「先輩…」
「ん?」
「明日も…来てくれますよね…??」
「当たり前な事聞くんじゃねーよ。毎日ウザいって程来てやるさ。」
「ありがと。」
久しぶりに和葉の笑顔を見たような気がした。
「何だよ?たまに笑顔見せるとこっちがドキドキするじゃねーか。」
「えー?ダメ?」
「ダメじゃねーけど。寧ろ嬉しいよ。」
キスしたい。抱きたい。正直いつまで自分の理性が保てるか分からなかった。
でも。
キスだけでも感染症だってあり得る。そうも告げられた。
そんな事言われたら何も出来なくなってしまうのは嫌だった。
だから入院する一日前に和葉を愛して良かったと心から思った。