メッセ②
高田と原西が付き合う事になってから二週間後。再検査を受けに会社から言われた病院へ行く事になった。それまで時間はあったのだが、忙しかったせいか、なかなか病院に行けなかった。また、高田と原西は同棲しようと考えていて、引っ越し先も考えながら会社に行っていた。
そんなある日のことだった。
「再検査…どうなのかな…」
「何、心配する事ねーよ。」
「でも…っ」
「大丈夫。」
実は会社宛に再検査の結果が届いたため、呼び出しを喰らっていた。
「さ、入ろう。」
社長室に入るのはなんだか気が重かった。でも高田に支えられてノックをした。
「はい?」
「原西です。あと高田先輩も一緒です。」
「まぁ、いい。入って。」
『失礼します。』
カチャ。
「あのぉ…」
「お、原西君…。あれ?何で高田も?」
「前川社長。原西に報告する前に、先に報告しておきたい事があります。」
「何だね?」
「俺達、今同棲中なんです。」
「まぁ、原西には親御さんがいないらしいしな。俺は別に反対なんてしないから安心しろ。」
「…!!」
「で?報告それだけか?」
「はい。」
「良かったな。おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「それで…こんな良い報告の後…こんな事言うの俺本当嫌なんだけどよ…」
検査結果だとすぐに分かった。
分かったと気付いてから緊張してきた。
「原西君、そして高田君。」
『はい。』
緊張の一瞬。
「原西君はな…乳がんの検査結果だったんだが…」
「……。」
「検査結果は…乳がんだった…」
「………。」
ショックだった。言葉が出てこない。
「で、入院してもらうことになる。」
「…いつ頃ですか?」
言葉が詰まった。
「…できれば、明日…もしくは今日のこの後からでも…遅くはないそうだ。」
「…入院に対して抵抗があるわけじゃないですけど、高田先輩と相談してからでも大丈夫ですか?」
「あぁ。それからの方が良いだろう。それに。」
「それに?」
「いや、後で高田に言うよ。」
「はぁ。」
「それじゃ、お大事に。お見舞いには行くからな。」
「…お忙しい時期にこんな事になってしまって申し訳ないです…」
「良いの。そんな事気にしてたら自分が参っちゃうよ…」
「…分かりました。失礼します。」
社長室を出た。
「…っっひっく……っ」
「とりあえず、落ちつこう?な?」
「…っっ」
「はいよ。」
渡されたのは和葉の好きな缶コーヒー。
「先輩…」
「ん?」
「私…生きられる…?」
「おま、何つーこと言ってんだよ…」
「だって…!!何一つ不安なんだよ…っ!」
「俺がいる。だからといって俺だって不安だよ、正直。」
「…」
「でもな、二人で居るって事が何より大事なんじゃねーの?」
「…そうだね…」
「病院。この後行こうな?」
「うん。」
高田と原西は同じフロアで働いていたため、上司も同じ人。
上司にもお互いの同僚にも同棲してる事を伝えてはいた。しかし病気の事は触れていなかった。
「小池さん。」
「おー、どうした?二人改まって。まさか結婚か?」
ざわついた。
「ち、違います!そうだと良いんですけど…ちょっとそんな良い話じゃないんです…」
「…え?」
何か嫌な予感を小池は感じとった。
「この後二人で早退したいんです。和葉、かなりヤバいらしいんです…」
「病院でも行くのか?」
「ええ。」
「でも今ピンピンしてんじゃんよ。」
「私…これから入院するかもなんです…だから…」
「なるほど。病名は高田から聞くとするから、帰っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
「また何かあったらすぐに言えよ?」
「はい!」
「それじゃ失礼します。」
そして会社のビルを出た。
会社から病院までは歩いて5分とかからない近くて大きな総合病院だった。
「先輩…もしかしてここ?」
「そう。」
「私、入院したことないからちょっとドキドキしてるんだ。」
「そっか。実は俺も入院したことない(笑)」
「そうなんだ!」
自動ドアを開けて中に入る。一応受付に行くと。
「あ、原西さんですね、どうぞこちらです。」
とりあえず、看護師さんに着いて行く事に。
案内された部屋は362号室。
「こちらです。個室しか開いてなくって…スイマセンね…」
「いえ、大丈夫です。」
「今日からお世話になります、看護師の大田原と申します。宜しくね、和葉ちゃん。」
「はい、よろしくお願いします。」
「隣の男性は?」
「彼氏の高田です。」
「結婚してないんだ?」
「その予定だったんですけど…予定変更です。」
「別れるのかしら?」
「違いますよ。本当はこんな話じゃなかったら結婚する予定だったんです。ね?和葉?」
「うん…」
「なるほど。」
「へ?」
「ううん、こっちの話。それじゃ、もうじき先生来ると思うからもうちょっと待っててね。」
「はい。」
「…先生って男?」
「じゃないの?」
「だよな…」
「妬いてるの?」
「…!違っ!」
「単純なんだから。大丈夫。婚約だってしてんのに、今更?って感じするでしょ?」
「そうだな。ゴメン。」
「大丈夫だから安心して!」
コンコン。
「ハイ?」
「失礼します。あ、原西さんの担当の友重と言います。」
「あ、宜しくお願いします。」
「えと、二人は病気の事知ってるんだよね?」
「はい。」
「原西さんも彼も大人だから多分大丈夫だと思うけど…」
「…」
「原西さん。」
「はい。」
「えと…」
「高田です。」
「原西さんと高田さん。」
「はい。」
「乳がんなのは御存知だと聞きました。」
「はい。」
「宣告させて頂きます。」
「_______。」
先生が何を言ってるのか理解できなかった。
「…」
そして先生の言った事がフラッシュバックした。
「えぇ?!」
冗談だと思いたかった。でも冗談で受け入れるようなものではなかった。
「何か…自分で気付く…とかってあります?」
「自己意識は…難しいと言っても過言ではありません…」
「…」
「手術は?」
「無駄の抵抗だと思って下さい…もう手がつけれらないんです…」
末期だった。それ故、他にもがんが転移していたのだった。
「そんな…」
そして原西和葉の入院生活が始まったのである。