逆プロポーズだ!
ロックくんと二人きりで会う機会を作ってもらった。
「アニエス様、二人きりでお話したいとのことでしたがどうされましたか?」
「あのね、実は…ロックくんと結婚したいと思ってるの!」
「え?」
「気心の知れたお友達で、相性もいいしロックくんと結婚できたら幸せだと思ったの!私と婚約してください!」
背中に隠していた薔薇の花束をばっと渡す。
「…アニエス様」
心臓がドクドクと脈打つ。
うるさいくらいの心臓に目をぎゅっと瞑った。
ロックくんはそんなわたしから薔薇の花束を受け取る。
思わず目を開けると、ロックくんはとても優しい表情でこちらに微笑みかける。
「謹んでお受け致します、アニエス様…いえ、アニエス」
その柔らかな微笑みに、ずきゅんと心臓を撃ち抜かれた。
「え、あ、あ、うん。ありがとう」
「早速父上と侯爵様に婚約を認めてもらいに行きましょう」
さりげなくわたしの手を取って、エスコートして二人が談笑しているであろう応接間に向かうロックくん。
あれ、ロックくんってこんなに積極的だったっけ。
こんなに色気すごかったっけ。
こんなに男らしかったっけ。
そういえば、手も大きくてゴツゴツした男の人の手だ。
「父上、侯爵様。失礼します」
「なんの用だ」
「アニエス様との婚約を認めていただきに来ました」
ロックくんがそう言うと、パパとマルソーおじさんはロックくんと私にそれぞれの親の隣に座るよう促す。
「アニエス、本当にこの男を婿にするのか」
「う、うん!」
「そうか。お前が望むならそれでいい」
「父上も、よろしいですよね?」
「もちろん、願ったり叶ったりだ」
パパが教会に婚約を届け出るための書類を取り出した。
「全員サインしろ。あとで教会に出す」
「はーい」
「はい」
「いやはや、感慨深いですね」
サインをした。
パパが書類を大切そうに仕舞う。
「責任を持って出しておく」
「よろしくお願いします」
「いやはや、めでたいですな」
「パパ、せっかくだしお祝いの言葉が欲しいな」
「おめでとう、アニエス」
珍しく優しく微笑んで、私の額にキスをするパパ。
「あ、そうだ。アリス先生にも伝えて来なきゃ」
「行ってこい」
「では行きましょう、アニエス」
「うん」
またロックくんと手を繋いで、日向ぼっこしてお昼寝していたアリス先生のところに向かう。
気持ち良さそうに寝ているアリス先生に声をかけるのは忍びないのでどうしようかと思ったが、人の気配にアリス先生の方から起きた。
「んん。あれ?アニエスおはよう。どうしたの?」
「あ、うん。婚約が決まったからご報告」
「随分と急だね。ロックくんと言ったかな。君がお相手?」
「はい」
「うちの子孫をよろしくね」
そう言ってロックくんの頭をポンポンと撫でるアリス先生。
「アニエス」
「うん」
「婚約おめでとう」
「うん、ありがとう!」
そしてアリス先生にも祝福された。
その後幸せな気分のまま、帰っていくロックくんとマルソーおじさんを見送った。




