教皇猊下も味方だもん!
「教皇猊下、お久しぶりです」
「ええ。アニエス様、お久しぶりです。せっかくお声かけいただきましたのに、お会いできるのが遅くなってしまって申し訳ありません」
「いえいえ」
「聖女さまのなさったことはお聞きしました」
教皇猊下は私に頭を下げる。
「本当に聖女さまが申し訳ありませんでした。私の監督不行き届きです」
「いえそんな!私が聖女さまを不安にさせてしまったんです」
「…どういうことでしょう?」
きょとんとする教皇猊下に話す。
「実は、初めて会った日に聖女さまは私を侯爵家の御令息だと思って会えるのを楽しみにしていたそうなんです。でも実際は女の私が来たから、驚いて悪態をついてきて」
「それは重ね重ね申し訳ありません」
「いえ、それで私あんまりな態度に言い返してしまって…他の神話系統の女神様から加護を受けていることを言ってしまって」
「え」
「あ、そっちもせっかくなので説明しますね」
教皇猊下にあの世界一周旅行について事細かく説明した。
「そういうことでしたか…」
「それが聖女さまにとっては地雷だったらしくて」
「ふむ…聖女さまは、スラム街にいた孤児だったのです」
「え」
「そこをたまたま休日の趣味として炊き出しの手伝いをしていた私が見出して、保護したのです」
そうか、そういう出自ならば聖女の地位を脅かされたら怖いだろう。
「ごめんなさい、聖女さまを不安にさせて」
「いえ、この件はどう考えてもこちらの落ち度ですのでお気になさらないでください」
教皇猊下は本当に悲しげに私の手をとる。
「ですが、どうか出来るならば聖女さまを許して差し上げて欲しいのです。彼の方は世間というものを知りすぎ、荒んでしまっている。そんな彼の方を見捨てないで欲しいのです」
私はそんな教皇猊下に頷く。
「もちろんです。私も聖女さまと仲直りしたいです!」
「ありがとうございます、アニエス様」
「でも、もちろんアニエスの味方をしてくれるんだよね?」
アリス先生が問えば、教皇猊下は頷く。
「それはもちろんです。そもそも、私が事態に気付いた時にはすでに皇帝陛下と皇后陛下がアニエス様を守る発言をされていましたし…噂自体嘘だと訂正がされて誰もが大抵は噂を信じていない状況でしたから」
…もしかして、お友達みんなが噂を訂正してくれたのかな。
有り難いな、みんなとお友達になってよかった。
「ですが改めて、教皇として私もアニエス様が潔白だと公の場で宣言いたします」
「よろしくお願いします!」
どうやら邪教徒騒動は一時的に変なことになったものの、みんなのおかげですぐに落ち着きそうです。