そこまで言うなら、私だって別の神話系統とはいえ女神様から加護もらってるもん!
「しつこい女ね!帰れって言ってるのよ!ここまで言って帰らないとかメンタル強すぎない!?」
「まあメンタル強すぎるのは本当だと思います」
最初の頃は拒絶モードだったパパにもガンガン行ったしね。
「なんなのよアンタ、私は聖女さまよ!?」
「存じ上げております」
「神に力を与えられた存在なのよ!」
「存じております」
「アンタなんか、ただの狂犬侯爵の後継でしかないくせに!」
パパまで悪く言われるとさすがにちょっとカチンとくる。
「お言葉ですが、父は他の貴族からは狂犬呼ばわりされていますが領民たちや屋敷の使用人たちからは慕われております。そして顔がいいです」
「なにそれ自慢!?」
「そして我が侯爵家は大賢人たるアリス先生が始祖であり、未だその庇護下にありますのでただの侯爵家とは一線を画すかと。もちろん他の侯爵家を貶める意図の発言ではありませんが。そしてアリス先生もイケメンです」
「やっぱりただの自慢よね!?」
「そういうことですので、先程の発言は撤回していただきたいのですが」
私がそう言えば、聖女さまはそっぽをむいた。
「たとえそうだとしても、神様から力を与えられた私の方が偉いもん」
これでは埒があかないと思って、軽率かもしれないが秘密を打ち明ける。
「そこまで仰るなら、私だって別の神話系統とはいえ女神様から加護をもらっている立場です」
「…はぁ?」
「私はそこにいるだけで邪気を祓う能力をいただきました」
「なにそれ、そんなホラ吹いてどういうつもり?…いや、まさか、そんな…本当に加護持ちなの?」
「はい」
「…!」
聖女さまは突然私を追い出そうとする。
「え、聖女さま?」
「私の地位は奪わせないわ!」
「え、あの、落ち着いてください。私にはそんなつもりはありません!」
「うるさい嘘つき!アンタなんか大っ嫌い!消えてしまえ!」
おおよそ聖女さまの言っていいことじゃないよ、それ!
「聖女さま」
「ようやく衣食住の保障された生活を送れるようになったのに!なに不自由のないお貴族さまに奪われてたまるか!」
なるほど、この聖女さまは色々と苦労してきたタイプらしい。
これは地雷を踏んだ私の自業自得だ。
「聖女さま、すみません。今日は帰ります」
「さっさと帰れ!」
「聖女さまを不安にさせてすみませんでした。でも本当にそんなつもりはないので、どうかご安心ください」
「うるさい!」
「失礼しました」
ああ、色々やっちゃったなぁ。
パパとアリス先生にも相談と報告と謝罪をしなければ。




