へえ、聖女さまのお話係…え、めんどうくさい
「アニエス、今少しいいか」
「なに?パパ」
「教皇から依頼があった」
「依頼?」
教皇様からの依頼ってなんだろう。
「最近聖女が見つかって教会で預かっているのは知っているな?」
「うん」
「その聖女とやらの、お友達になってほしいらしい。お話係とでも思えばいい」
へえ、聖女さまのお話係…え、めんどうくさい。
「ちなみに、その聖女とやらが美少女として有名らしい」
「やります!やらせてください!」
思わず手を挙げていた。
美少女ならば話は別というやつである。
よっぽど性格がカスでない限り好きになる自信がある。
「そうか、なら教皇には了承の返事をしておく」
「ありがとう、パパ!大好き!」
「俺も愛している」
ということで、聖女さまのお話係に任命されました。
「へえ、アニエスが聖女さまのお話係に?」
アリス先生は少し意外そうな顔をする。
「アニエスの好みのタイプなの?」
「うん、美少女なんだって!」
「なるほどね」
美少女と聞いて納得した表情になるアリス先生。
「僕はてっきり断るものだと思っていたけど、美少女ならまあアニエスは頷くよね」
「なんで断ると思っていたの?」
「いや、アニエスはなんとなく仲のいい子以外とは当たり障りのない関係を築いているように見えたから」
あら、バレてる。
「仲良くなれるといいね、アニエス」
「うん、仲良くなれたら嬉しい」
来週から毎週決まった曜日にお会いすることになるらしい。
優しい聖女さまだといいな。
中央教会の祈りの場で、祈りを捧げる少女が一人。
美しいその少女は、お祈りが終わると笑みを浮かべた。
「ああ、お話相手に選ばれた次期侯爵さまってどんな方かしら!楽しみ!」
ワクワクとした表情で、まだ見ぬ誰かに想いを馳せる彼女に、後ろから声をかける者がいた。
「聖女さま」
「教皇猊下!」
聖女と呼ばれた少女は、教皇に問いかける。
「ねえ、次期侯爵さまって侯爵さまにそっくりなのですよね?」
「ええ、まるで瓜二つの親娘ですよ」
「まあ、瓜二つの親子…性格は?」
「優しくて親しみやすい方です」
「ふふ、素敵!」
夢見る少女のように、まだ見ぬお話係に期待に胸を膨らませる聖女さま。
まさか自分のお話係が同性だとは知らないままに、聖女さまは勝手に一人で盛り上がっていた。
教皇もまさか聖女さまが自分のお話係を異性だと思っているとは思わず、楽しそうに目を輝かせる聖女さまを優しく微笑んで見守っていた。




