いい加減皇后陛下も素直になろうよ
「お待ちなさい」
ほらきた。
フェルナン様の待つガゼボに向かう途中で、皇后陛下に声をかけられた。
またも御付きの人はいない。
どうやって抜け出してきたのやら。
きっと御付きの人が、皇后陛下が皇帝陛下のお気に入りに喧嘩を売ったと告げ口したらたまらないからだろうけど…。
「こんにちは、皇后陛下」
「御機嫌よう。それより、貴女今日も我が愛おしい息子に媚を売りに行くの?」
「媚を売りに行くのではなく愛でに行くのです」
「は?め、愛でに?」
困惑する皇后陛下に畳み掛ける。
「それより皇后陛下、さっき皇帝陛下にもっと皇后陛下との時間を持てと言っておきましたよ」
「はっ!?」
「だから皇后陛下も、もっと皇帝陛下に素直になりましょうね」
「素直にって貴女ね…!!!」
「それができれば苦労はないと思いますけど、皇后陛下も歩み寄らないとダメですよ。少なくとも皇帝陛下は皇后陛下と仲良くなりたいみたいですから」
私の言葉に固まる皇后陛下。
「皇帝陛下は、統治は上手くできるはずなのに人の心がまったくわからない人です。だから仲良くなる方法がわからないだけ」
「私は嫌われていない、ということ?」
「はい。むしろ仕事のパートナーとして信頼されていますし、仲良くなりたいと思うくらいには好かれてますよ」
「え…嘘…」
「あと、せっかくそんなに美人で可愛らしい性格なのですからもっと素直になった方がいいです」
今度は目を見開いて驚く皇后陛下。
「え、え、私が可愛い…?素直じゃないのに?」
「その分素直になった時めちゃくちゃ可愛いんですよ。フェルナン様と似ていらっしゃるんです」
ぼぼっと皇后陛下が真っ赤になる。ほら可愛い。
「そ、そうかしら。そうなのね…」
「ええ、ですから皇帝陛下の前では素直になってください」
「わ、わかったわ」
「あと、フェルナン様のことももっと直接甘やかして差し上げてください」
「え…」
皇后陛下は戸惑った表情になる。
「甘やかすのはダメと言われているかもしれません、でもフェルナン様は自分で努力できる人です。多少甘やかしても堕落するタイプじゃないです」
「でも、いいのかしら」
「フェルナン様は表には決して出さないけれど、寂しがっていらっしゃいます。母に甘えたいというのは幼い子供なら当然です。だから、幼い今だけは甘やかして差し上げてください。限度は考えてほしいですけど」
皇后陛下は頷く。
「わ、わかったわ。私、ちょっと頑張ってみます」
「それは良かった」
「その…酷いことを言いました。ごめんなさい。アドバイスありがとう」
そう言って控えめに微笑む皇后陛下は、やっぱり可愛い人だった。
その後フェルナン様とお茶をしたけれど、やっぱりフェルナン様は両親の話になると少し寂しそうで…早く拗れた家族関係が直るといいな。




