皇帝陛下もいいかげんなんとかした方がいい
「やあ、天使様」
「こんにちは、皇帝陛下」
さて、今日もフェルナン様と遊ぶ予定。
でもその前に。
「約束の時間より早く来てくれたけど、もしかしてなにかあった?僕は大歓迎だけど」
「皇帝陛下にお話があって」
「お話?」
パパとアリス先生には事前に皇帝陛下にお説教すると言ってある。
なのでずばっと言おうと思う。
「皇帝陛下は、皇后陛下と上手くいってますか?」
「いやぁ、それが全然。皇后として頑張ってくれているけれど、仕事のパートナーとしては最高に良いんだけど夫婦仲は別なんだよね」
「皇帝陛下」
ちょいちょいと手招きすれば皇帝陛下は私のために屈んでくれる。
デコピンをお見舞いした。
「イタッ」
「ぶふっ…」
リオルさんがそれを見て笑いを堪えられず吹き出した。皇帝陛下がデコピンなんてなかなかないもんね。
「天使様?」
「あのね皇帝陛下、夫婦の仲を円満にしたいなら皇帝陛下が皇后陛下に寄り添ってあげるべきなんですよ」
「寄り添う?」
きょとんとする皇帝陛下に、これだからこの人はと頭が痛くなる。
アリス先生が引き摺り下ろそうとしないってことは統治は上手くいってるようだけど、人の心がわかってなさすぎる。
「あのね、フェルナン様の性格と皇后陛下の性格は似てると思うんです。素直になれないところとか」
「素直になれない…」
「皇后陛下は素直になれない性格なのだから、皇帝陛下の方から歩み寄って寄り添わないと。夫婦の仲を悪くするのはフェルナン様の人格形成にも影響が出ますよ」
「ううん…なるほど」
「とびきり優しくしてあげてください。プレゼント攻撃しろって話じゃなくて、たとえばお話する夫婦の時間を作るとか…あとは皇后陛下のお話を楽しく聞いてあげるとか」
果たして私のアドバイスは皇帝陛下の心に響くだろうか。
「…わかった、やってみよう。僕だって、皇后とは仲良くなりたいし」
「あ、皇后陛下のことは名前で呼んであげてくださいね。夫婦なのですから」
「な、なるほど」
うんうんと真剣に聞く皇帝陛下。
リオルさんをちらっと見たら、スッ…と目をそらされた。
どうやら皇帝陛下の人間付き合いの下手さを理解した上でどうしようもなかったと見える。
「わかった、とにかくリリムに優しくしてみる!」
「あと、フェルナン様とももうちょっと交流を持ちましょうか」
「フェルナンと?」
「放任主義過ぎます、口に出してないだけでフェルナン様は寂しがっていますよ」
「え、そうなの…?」
びっくりしないでください。フェルナン様はまだ子供なんだから当たり前でしょうが。
「フェルナン様も素直になれない性格ですから、とびきり優しく接してくださいね」
「わ、わかった」
大丈夫かなぁと心配しつつ、皇帝陛下と別れて退室する。そして次のターゲットを探した。




