皇帝陛下と二度目まして
パパとアリス先生に連れられて、皇帝陛下の待つ謁見の間にきた。
皇帝陛下はあの時と違って優しくて無邪気そうな可愛い笑顔で出迎えてくれる。
「やあ、天使様。よく来たね」
「は、はい」
「そんな不安そうな顔をしなくてもいいんだよ。こちらへおいで」
手招きをされて少し近寄る。
「この間は本当にすまなかったね。許してくれるかい?」
「あ、えっと…はい、大丈夫です」
「よかった。ありがとうね」
皇帝陛下がわざわざこちらに来て、私の頭を撫でる。
…皇帝陛下がパパに執着する理由も知ってしまっているから、無下にも出来ないんだよなぁ。
黙って撫でられていると、アリス先生が寄ってきて皇帝陛下の手を払い除けた。
「謝罪は済んだよね?じゃあ連れて帰るから」
「釣れないことを仰らないでください、大賢人様」
「そっちこそ、アニエスを泣かせたくせに都合のいいことを言わないで」
ありゃ、アリス先生の方が激おこだ。
「ですからこうして謝罪して、仲直りしようとしているのですよ」
「仲直りね…アニエスが許しても、僕は許していないのだけど」
うーん、これはどうするべきか。
「アリス先生」
「なに?アニエス」
「私は大丈夫」
そう言ってアリス先生に笑いかけたら、アリス先生は困った顔をした後私の頭を撫でる。
「アニエスは本当に優しいね。でも、嫌なら嫌だと言っていいんだよ」
「皇帝陛下がパパのことを大好きなのはわかるし、パパへの気持ちが行き過ぎただけなのもわかるよ。怒ってないよ」
何故私が皇帝陛下を庇ってあげないといけないんだろうと思いつつも、弁護してあげる。
するとアリス先生も折れてくれた。
「…まあ、アニエスがそこまで言うなら」
「ありがとうございます、大賢人様。天使様、これからは仲良くしてね」
「はい」
まあ、皇帝陛下と仲良くするのは別に嫌じゃないし。
と思っていたら、アリス先生と反対側の私の隣にパパもきた。
「…謝罪が軽すぎないですか、皇帝陛下」
「おや、そうかい?なら…」
皇帝陛下が私と目線を合わせるためにしゃがみこむ。
「…本当にごめんよ。どうか許しておくれ」
「はい、大丈夫です。怒ってないです」
これは皇帝陛下的には精一杯の謝罪だろう。
なのでもう気にしないことにする。
「じゃあ、僕たちは今度こそお暇するから」
「またね、ジャック、天使様。大賢人様もお元気で」
「失礼します、皇帝陛下」
パパは皇帝陛下に挨拶すると、私を抱っこして背を向ける。
アリス先生は、抱っこされた私と手を繋いで謁見の間を出る。
抱っこされながら皇帝陛下を見れば、ひらひらとこちらに手を振るのが見えた。
手を振り返すと嬉しそうに笑うその人に、寂しい人なんだろうなぁと少し同情して屋敷に帰った。




