パパを甘やかす
アリス先生とのデートの後、家に帰ってきてすぐアリス先生と共にパパのところへ向かう。
「パパ!」
「ジャック!」
「アニエス…アリスティドまで慌てて、どうかしたのか?」
「今忙しい!?」
「…ちょうど仕事を片付けたところだが」
パパは私とアリス先生の勢いにやや困惑気味。
でも私とアリス先生にはそんなこと知ったこっちゃないのでパパを中庭まで引っ張っていく。
「今日はお仕事終わったんでしょ、ちょっと付き合って」
「おやつにはまだ早いんじゃないか」
「中庭で薔薇を愛でながら肩もみしよう」
「肩もみ?何故急に」
「アニエスの前世では、親や祖父母に孝行する時の定番だったんだってさ」
アリス先生の言葉を聞いて、パパは困惑しつつも少し嬉しそうに表情を和らげた。
「そういうことか。だが何故今なんだ」
「前世でね、思い立ったが吉日ってことわざがあったんだよ」
「そうか」
ここまでくればパパも抵抗しない。
パパとアリス先生と三人で中庭に出て、花を愛でながらパパに肩もみをする。
「パパ、痛くない?」
「ちょうどいい力加減だな」
「よかったぁ」
パパの肩は、仕事の直後だからかガチガチ。
ぎゅっぎゅって頑張ってマッサージする。
パパはリラックスして身を委ねてくれている。
アリス先生はそんなパパにお疲れ様、と声をかけて労っている。
「…たまにはこういうのもいいかもな」
「えへへ、気に入ってくれたならよかった」
「ジャックは頑張り屋だからね。たまにはゆっくり過ごさないと」
「アニエスとのお茶の時間を設けるようにしてから体調も良いからな。実際リフレッシュも必要だとは実感してる」
おお、私のわがままがパパのリフレッシュにつながっていたとは。
「そうだ、アニエス。先延ばし先延ばしにしていたんだが、いよいよ面倒なことになった」
「え、なに?」
「皇帝陛下が、そろそろお前に面と向かって謝罪したいと」
げっ。
「…えー」
「もし嫌なら、僕から言おうか?」
「いやそれはさすがに…うー、わかったよ。会ってみる」
「ねえ、ジャック。その時僕も同席していい?」
「いいぞ、どうせ俺も同席する」
過保護だなぁと思うけれど、実際かなり助かる。
「よろしくお願いします」
「任せろ、今度こそちゃんとそばにいるから」
「今回は僕もいるのだし、そもそもあっちも反省しているはずだから気負わなくて大丈夫だよ」
その言葉の通り、パパとアリス先生がいる時点で怖いもの無しだから…まあなんとでもなるか。
そんな話をしているうちにマッサージしていた手が疲れて肩もみ終了。
パパは肩が軽くなったと喜んでくれた。
少しはパパを甘やかせたかな。




