友達を楽しみにしてたら、その前にまた変なのが湧いた
本来なら三人でのお茶の時間、パパがお客様の相手をしなきゃいけなくなった。
私はアリス先生と一緒にお茶にしようかと思っていたけど、お客様の娘さんがお話があると言うので、聞いてあげることにした。
どんなお話か大体想像はつくので、何かあればパパのところに行くとアリス先生と決めた。その場合、アリス先生も遠慮なく対処するとのこと。それまでは、基本私の判断に任せるって。
「わたくし、思うの」
アガット侯爵家のご令嬢とやらが、私に微笑む。
アリス先生はそんな私の隣でご令嬢をにっこり見つめているが、彼女の私へのどこか威圧的な態度に不満があるのかその目は冷たい。
そのアリス先生の視線の冷たさに、ご令嬢は気付いていない。
「大賢人たるアリスティド様や、皇帝陛下の庇護も受けているアニエス様だもの。将来はアメティスト家を継ぐのも大変良いと思うわ」
「…はい」
「でも、それで侯爵様の再婚の機会を奪うのは違うわ。別にわたくしはね、アニエス様がアメティスト家を継ぐ邪魔はしないわ。ただ、再婚は応援してくれないかしら」
…この人、今までのヤバい人達とは違ってまだマシな頭をしている。私を手懐けてパパに取り入ろうとしてる。
その割に、高圧的というか上から目線は隠せてないけど。
「えー、なになに?僕の可愛いアニエスの義母にでもなりたいの?」
アリス先生はにこにこ笑って威嚇するけど、彼女は気にしていない…というか、威嚇されてるのに気付いていない。
「ふふ、それもいいでしょうけれど。アニエス様も、いきなり継母が出来たら嫌よね?」
「…」
「だから、侯爵様の持つ別荘もあるわけだし別に暮らせばいいわ。わたくしは侯爵様とここで暮らして、侯爵様に本当の家族を作るから」
んー。
んー…この人もダメだな。
多少他よりマシだけど、パパに相応しくない。
とはいえ私に出来ることなんて限られてるので、内心キレてるっぽいアリス先生にパスする。
「アリス先生、私パパのところ行ってくる」
「うん、そうしておいで。この不愉快なのは僕に任せて」
「え、ちょっと…はぁ、やはり平民の血が流れているとダメね。話の途中よ」
「ダメなのは君だと思うけどなぁ」
「え」
私は知らん顔でパパの元へ向かう。
背中にとても冷たい空気を感じるけれど、まあ自業自得という奴だ。
パパと私とアリス先生は本当の家族なのに、パパに本当の家族を作るなんて変なこと言うから。
「…でも、パパとアガット侯爵のお話ってなんだろうなぁ」
乱入する前に聞き耳立てるか。




