アニエスの魔法のセンスは
「…で、アニエスの訓練はどうだ。順調か?」
「いやー…うーん」
「あまり才能がない…か?」
アニエスが寝静まった頃、ジャックに聞かれる。
「いや…どうかな」
「なんだ、はっきりと言え」
「…正直まだわからない」
「は?」
「魔力が少ない上に天才とは言えないレベルのセンスだけど、完全にダメダメでもないんだよねぇ」
僕の言葉にジャックは少し期待した目を向けてくる。
「この段階で期待させるようなことを言うのはどうかとは思うけど、アニエスは努力自体は出来る子だと特訓しててわかったし…努力次第では化けると思う」
「そうか」
「ただし、少ない魔力と並みのセンスを努力で補うって相当だよ。魔力が少ないだけでセンスがあるとか、魔力が多いけどセンスがないとかはザラにあるけど…」
「…やはり魔法を学ばせるのは難しいか?」
「結局は本人の努力次第。でも、頑張れば良い線いくと思うんだよなぁ。身内贔屓かもしれないけど」
魔力の緻密なコントロールさえ、習得してくれれば。
そしてコスパのいい魔法を選んで全部習得させてしまえば。
「今のところ本人にはやる気はあるし、むしろ可能性はあると思うんだよなぁ」
「…そうか」
ジャックは悩ましげな表情だけど、うん。
「本当に、あの子はまだ可能性を秘めてると思うんだ」
「努力で全てをカバーしてしまうほどの?」
「うん。僕のような大魔法使いにはなれないだろうけれど、僕が教えるんだから。やる気さえあれば、そして努力の方向性さえ間違えなければ…並みの貴族には負けないレベルになるよ、きっと」
「きっとか」
「どうあがいてもアニエス自身の努力次第なんだもの」
でも、今日一日。魔力を手に集める特訓をなかなか成果が出なくとも、出来るまで投げ出さずに頑張ったあの子なら。
「…うん。教え甲斐のある生徒になりそうだ」
「まあ、お前がそう言って目を掛けてくれているうちは大丈夫だな」
「ふふ」
本人さえ諦めなければ、コスパのいい魔法なんてそれこそ無限にあるんだから大丈夫。
あの子なら、いけるところまではいけるはず。
「せっかくジャックにわざわざ指名してもらえたんだし、始祖として子孫をきちんと導かなくちゃね」
「ぜひそうしろ」
「まあ本人はダメダメなわけじゃないんだし、他の貴族の子と比べて早いうちからの特訓なんだから案外心配ないかもね」
「あの子は魔法以外は優秀だから、魔法の習得に多くの時間を費やして問題ないしな」
「うんうん!ま、二人三脚で頑張るよ☆」
ウィンクをジャックに飛ばしたら、なぜか呆れたようにため息を吐かれた。
何故。




