特訓初日の成果
「まず、アニエスには魔力の緻密なコントロールを覚えてもらうよ」
「魔力の緻密なコントロール?」
「そう。アニエスはね、他の貴族の子たちと比べて魔力が少ないんだ」
それは本当のお母さんが平民だからかな。
平民と貴族では魔力の量が圧倒的に違うらしいし。
「でも、それは恥ずべきことじゃない」
「そう?」
「そう。才能の差は努力である程度は埋められる」
「ある程度かぁ」
まあ、嘆いても仕方ない。
「魔力の量は、僕みたいな例外はあるけど基本は増やせない。でも大丈夫。増やせないけれど、使い方さえ工夫すれば問題はないよ」
「その工夫が、魔力の緻密なコントロール?」
「そう!他の貴族の子たちは大概、魔法は習っても魔力のコントロールは必要な程度しか特訓しないからね。それも多すぎる魔力の暴走を防ぐためのもの。魔法を使うときのコスパなんて度外視なのさ」
「だから、私が魔力の緻密なコントロールが出来れば同じくらい魔法を使えるようになる?」
「その通り!同じくらい…か、少し追いつけない程度になるかはこれからの特訓次第だけど」
ふむ。努力すればとりあえず平均並みに魔法を使うこともできると。
「頑張る!」
「よろしい!じゃあ、まずは自分の中の魔力を知覚することから始めてみよう」
アリス先生はそう言って、私の手を握る。
「今から少し、アニエスの魔力を引き出すよ」
「うん」
握られた手がじんわりと温かくなる。何かが身体の中を巡って、手に集まる感覚。これが魔力なんだね。
「魔力の感触は掴めたかな?」
「うん!」
「慣れてくると、人の魔力も知覚できるようになるよ」
なるほど、そういうものか。
「じゃあ、魔力を自分で手に集められるようになろうか」
「うん」
「それが出来たら次のステップにいくからね」
私は頑張って、さっきの魔力が身体を巡って手に集まる感覚を必死に引き出す。
比喩なしに半日くらいかかったけど、なんとか手に魔力を集められるようになった。
「ごめんなさい、アリス先生。出来るようになるのに時間かかっちゃった」
「いいんだよ、大丈夫大丈夫。優秀とは言えないけど、並みのスピードだよ」
ぽんぽんと頭を撫でられる。これでもマシな方なのかな。
「そろそろお夕飯の時間だけど…最後にちょっとだけ。集めた魔力を放出してごらん?」
「ん?ん〜?」
放出と言われてもわからない。が、試しに手から魔力を放つイメージをしてみる。
手のひらからパッと綺麗な光が散った。
「これが私の魔力?」
「そう。明日からはこれを上手くコントロールすることを覚えていくからね」
「はーい」
とりあえず初日は上手くいきませんでしたが、頑張ります。




