先生は今日からお屋敷に住むらしい
「まあそういうことで、僕は今日から屋敷に戻ることになったから。よろしくね」
「お部屋は?」
「どうせ荷物もないし、適当でいいよ」
「バカ、それはこっちで用意してる」
「さっすがジャック〜!」
アリス先生は軽い調子でパパに絡む。
パパにとっては親戚のお兄ちゃんみたいな存在なんだろう、面倒そうにあしらいつつも嫌そうではない。
「そうだ!アニエスにプレゼントがあるんだ」
「え、プレゼント?」
「ほら、キラキラしていて綺麗でしょ?」
「うわぁ…!本当に綺麗!でもなにこれ?」
「星だよ」
星、と言われて耳を疑う。
「え、星?」
「そう、星」
「紛らわしい言い方を…アニエス、星といっても空の星じゃない。砂の星だ」
「砂の星?」
「あ、もう!ネタバレがはやいよ!」
アリス先生は頬を膨らませる。待って、パパそっくりのお顔でそれは可愛すぎる。きゅんとした。
「…アニエス?胸を押さえてどうした?」
「もしかしてどこか悪いの?」
「ち、違う…えっと、あんまりにも素敵なプレゼントだったから…」
「そんなに感激してくれたの?嬉しいな」
「でも砂の星ってなに?」
首を傾げればアリス先生は教えてくれる。
「ふふ、砂の星はね…ここからずっと東の島国で取れる特別な宝石さ!なぜか砂漠の中で砂を掘ってると見つかる不思議な宝石だね。よくわかってないことも多いけど、人体に害は無いし綺麗だからもらっておいてよ」
「東の島国…日本みたいな国かな」
「ニホン?」
「前の人生で住んでたお国」
「へえ、どんなお国だったの?」
アリス先生はキラキラした目を向けてくる。
「え、うーん…極東の島国って扱いで…基本平和で、基本安全で、文化が色々ごった煮状態で…特にオタク文化が花開く面白い国!」
「オタク文化」
「うん!二次元!」
「二次元?」
「えっとぉ…アニメとか、漫画とか…小説とか!」
私の拙い説明に、アリス先生は楽しそうに笑う。
「なるほど、創作の世界だね。そういうのが人気なのか」
「クオリティーも高いの!特にアニメは絵がヌルヌル動くよ!」
「…動く紙芝居みたいなものかな?」
「声もついてるの!声優さんって専門の人がいるの!」
「専門の職人までいるのか」
ふんふんと頷くアリス先生。どれだけ伝わってるかわからないけど、色々想像してくれてるみたい。
「ねえジャック、その辺の技術はまだ実用化しないのかい?」
「今はまだ建築物を安全性の高いものに建て替えたり様々な施設を新しく作ったり、自動車とやらの増産やそれを走らせる道路の整備なんかが先だ。馬車もまだ使うだろうから車との共生も考えるし、他にも家電とやらや便利グッズなんかの実用化もある」
「遊園地は作ったんだろう?」
「娯楽もそれなりに並行して発展させる気はある。だが、鉄道とやらも国内に広く展開する話があるからやはりどうしても後回しになる」
「むー」
不満そうなアリス先生に笑う。
私が魔法を使えるようになれば、アリス先生にアニメを見せてあげられるかな。




